始まりは、今年の2月。NHK会長就任時の記者会見において、歴史研究の蓄積を無視した私見を披露したこと。
籾井勝人NHK新会長が就任記者会見で、日本軍慰安所制度の固有性を無根拠に否認したとのこと - 法華狼の日記
http://www.asahi.com/articles/ASG1T5J3XG1TUCVL005.html
籾井氏は従軍慰安婦問題について「今のモラルでは悪いんですよ」としつつ、「戦争をしているどこの国にもあった」としてフランス、ドイツの名を挙げた。「なぜオランダにまだ飾り窓があるんですか」とも述べた。飾り窓はオランダなどにある売春街を指す。
他国がおこなっていたことは、批判に対する反論にはならない。
やがて該当部分の書き起こしが複数おこなわれ、ノーカット映像も公開された。先に記者の質問がありつつも、問われていないところまで私見を述べたことがはっきりした。
籾井勝人NHK新会長記者会見の文字起こし、その紹介と雑感 - 法華狼の日記
籾井勝人NHK新会長の記者会見ノーカット映像で新情報 - 法華狼の日記
直後に、NHK理事に辞表を提出させていた問題も明らかになった。
http://www.asahi.com/articles/ASG2T3C9DG2TUCVL003.html
NHKの籾井勝人会長が就任後、10人の理事全員に日付欄を空白にした辞表を提出させていたことが25日、わかった。この日午前の衆院総務委員会に参考人として招かれた理事10人が提出を認めた。
籾井氏は当初、人事案件を理由に答えなかったが、理事の答弁後は「各理事は事実をそのまま述べた。それはそれでけっこう。私がどう思うかは別問題」と述べた。
辞表について3月の会見でも改めて語り、他でもやっているという自己弁護をくりかえした。その理屈は従軍慰安婦問題に対する見解とそっくりだった。
http://www.asahi.com/articles/ASG365HZLG36UCVL01W.html
国会答弁で「一般社会ではよくあること」と発言したことについて、企業名など実例を問われたが「皆さんでお調べになったら」とし、答えなかった。
この辞表について3月にも国会で答弁。支離滅裂な理由で返却しないことを明言した。
http://www.47news.jp/CN/201403/CN2014032001001219.html
NHKの籾井勝人会長は20日の参院予算委員会で、理事に提出を求めた辞表の取り扱いについて「書いていただいた理事一人一人の真摯な気持ちを考えると、返すわけにはいかない」と述べ、辞表を返却する考えがないことを明らかにした。
今年の4月1日の入局式においては、籾井会長自身へ真っ先に突き刺さるような訓示をおこなっていた。まるで四月馬鹿のような報道だった。
http://www.asahi.com/articles/ASG416FF4G41UCVL034.html
新入局員の入局式での講話で、「(就任)初日に記者会見を行った際、質問に答えて個人的な意見を言い、大きく報道されました。入局前の皆さんには、ご心配をかけたことと思います。たいへん申し訳ありません」と話し、謝罪した。
その後、NHKが受信料によって成り立っていることに触れ、「職員全員が信頼や期待を積み重ねていったとしても、たった1人の行為がNHKに対する信頼のすべてを崩壊させることもあります。自らの行為の、NHKや日本の社会に与える影響や責任の重さは、昨日までとは全く違うことを、しっかりと自覚していただきたいと思います」と話した。
また、発覚前の不祥事情報を提供するよう呼びかけていたこともわかった。不祥事があいついだことを受けた行動とはいえ、すでに通報する仕組みがあること、何より籾井会長自身への信頼がないことが反発を生んだ。
http://www.asahi.com/articles/ASG4562S3G45UTIL01K.html
異例の呼びかけに、職員からは「密告を勧められているみたいだ」と反発の声があがっている。
こうした問題を受けて過去の評価についても洗い出され、アジアバドミントン連盟の会長を全会一致で解任されていたという報道まで出てきた。
http://sp.mainichi.jp/select/news/20140225k0000e040232000c.html
アジアバドミントン連盟(BAC)は昨年3月、臨時総会で籾井会長の解任を全会一致で決定、即時解任したと発表した。BAC事務局長はAFP通信に「理由の一つは籾井氏が世界バドミントン連盟の会長選でアジアの候補者支持を表明しようとしなかったこと」とコメント。実業団関係者は「アジア各国の意見調整を期待されていたのに、欧州の候補者を独自に推そうとして反発を招いたようだ」と解説する。
日本ユニシスはバドミントンの強豪で「オグシオ」の潮田玲子さんが所属したことがある。「現在も会長は私だと抗議する電子メールが籾井氏から送られてきたが、このようなメールは会員間に不安と混乱を広げるだけだ」。BACは現在も籾井氏を非難する声明を公式サイトに掲載している。
さて、こうした問題に対して批判が寄せられたことで、視聴者に向けて謝罪するという報道があった。
http://www.asahi.com/articles/ASG4C5HGSG4CUCVL015.html
NHK広報局によると、籾井氏は番組の冒頭から十数分間出演し、波紋を広げた自らの発言について話すという。また、今年度のNHK予算と事業計画についても説明する。
番組は収録形式だという。籾井氏は定例会見で、収録番組であることについては「僕は生放送には耐えられないでしょう。適切な言葉も使えなくて」などと話していた。
この報道を目にしていたので、たまたま録画して見ることができた。
しかし具体的に何が悪かったのかは何一つ語らず。報じられた入局式での講話と同じく、ただ議論のわかれる話題で私見を話したことのみ頭をさげた。女性観や人権意識といった、議論の余地がない領域でも批判されていることは理解できなかったらしい。
http://www.asahi.com/articles/ASG4F3G64G4FUCVL001.html
籾井会長は、収録番組の冒頭から十数分間出演。「(就任)会見は不慣れだったため、複数の議論がある事柄について、NHK会長の立場と個人の立場を整理しきれないまま発言してしまった」とした上で、「公式の場で個人的な見解を述べたことは、不適当、不適切であり、発言を取り消しました」と述べた。
その他は、国会等で多くの質問をされたとだけ説明し、批判を聞いたという風景を流したり、制作現場に圧力をかけるつもりはないと口頭で説明しただけ。「慰安婦」や「辞表」といった言葉すら出てこなかった。
さらに細かい話をいうと、前半の謝罪において、会長と個人の立場を整理しきれなかったと説明している場面で噛んだのが凄かった。生放送には耐えられないからと録画で謝罪しているはずなのに、どうして撮影しなおさなかったのだろう。