法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『舞面真面とお面の女』野崎まど著

「心」「体」「面」の三つを解くと「よきもの」が待っているという曾祖父の遺言。主人公の青年は叔父に依頼され、叔父の娘と協力して謎を解こうとする。
そして主人公の前にあらわれる、金属製の立方体「心」と、立方体の一枚岩「体」と、動物の「面」をかぶった少女。


受賞後第一作。過去に読んだことのある著者の作品と同じく、登場人物が少なめで描写に無駄がなく、すらすら引っかかりなく読めた。
一代で消滅した舞面財閥の遺産をめぐっての謎解きは、まあ順当なところ。ちゃぶ台返しのようでいて、さほど暗号の解法として珍しくはない。解かれた後のどんでん返しも、まあ伝奇ミステリとしては珍しくない。
しかし主人公が最後に示した真相は、しっかり伏線もはられながら、まったく予想できなかった内容で、小ネタながら楽しかった。それでいて仕掛け人の性格からすると自然な行動であり、クレバーな人格が際立つ描写として意味がある。さらに、登場時の印象に比して小人物として終わってしまいそうだったキャラクターが、意図せず一矢を報いていたという快感まであった。