法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

承諾時に強制して連行することは強制連行ではない、と安倍晋三内閣が閣議決定したらしいとの報

質問者が共産党議員なためか、赤旗がいちはやく報じている。
政府資料の強制性否定/「慰安婦」問題 安倍内閣が強弁/赤嶺議員に答弁書

 安倍内閣は25日、日本軍による「慰安婦」の強制連行を示す資料=「バタビア臨時軍法会議の記録」について、強制連行を示す証拠はないとする答弁書閣議決定しました。日本共産党赤嶺政賢衆院議員の質問主意書への答弁。

 安倍内閣は6月18日、政府が発見した資料の中に「バタビア軍法会議記録」が含まれていることを初めて認めました(赤嶺氏の質問主意書への答弁書)。

 6月18日の答弁書は一方で、同記録に関しても強制性を否定。赤嶺氏は「国民の常識では理解できない」として、記録にある日本軍人らによる強制連行は安倍内閣の言う「いわゆる強制連行」に当たらないという認識かと再度質問主意書を提出しました。しかし、政府は再度、強制性はないとする答弁書を出しました。

まず、6月18日に出された質問主意書と答弁本文は衆議院サイトでアップロードされている。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a183102.htm*1

 この〔法務省関係〕(バタビア臨時軍法会議の記録)は、1「ジャワ島セラマン所在の慰安所関係事件」について、「判決事実の概要」を記しているが、そこには、「ジャワ島セラマンほかの抑留所に収容中であったオランダ人女性らを慰安婦として使う計画の立案と実現に協力したものであるが、慰安所開設後(一九四四年二月末ころ)、「一九四四年二月末ころから同年四月までの間、部下の軍人や民間人が上記女性らに対し、売春をさせる目的で上記慰安所に連行し、宿泊させ、脅すなどして売春を強要するなどしたような戦争犯罪行為を知り又は知り得たにもかかわらずこれを黙認した」などの記述がある。間違いないか。
 この「判決事実の概要」には、「一九四四年二月末ころから同年四月までの間、部下の軍人や民間人が上記女性らに対し、売春をさせる目的で上記慰安所に連行し、宿泊させ、脅すなどして売春を強要するなどしたような戦争犯罪行為を知り又は知り得たにもかかわらずこれを黙認した」との記述がある。「上記女性」とは、「ジャワ島セラマンほかの抑留所に収容中であったオランダ人女性」である。これらの記述は、「軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述」にあたらないのか。

http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b183102.htm

三及び四について

 内閣官房内閣外政審議室が平成五年八月四日に発表した「いわゆる従軍慰安婦問題の調査結果について」において、御指摘のような記述がされている。

五及び六について

 政府の認識は、答弁書一の1から3までについてでお答えしたものと同じである。

6月の答弁について正確にいうと、はっきり「強制性を否定」したというよりも、口を濁して明言をさけつつも、否定した前例を踏襲したといったところか。
踏襲するとした「答弁書一の1から3まで」とは、2007年3月に辻元清美議員が提出した質問趣意書に対する答弁の記述。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b166110.htm

一の1から3までについて

 お尋ねは、「強制性」の定義に関連するものであるが、慰安婦問題については、政府において、平成三年十二月から平成五年八月まで関係資料の調査及び関係者からの聞き取りを行い、これらを全体として判断した結果、同月四日の内閣官房長官談話(以下「官房長官談話」という。)のとおりとなったものである。また、同日の調査結果の発表までに政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかったところである。

踏襲した前例については、あらゆる証拠を全否定しているというより、河野談話発表までの政府調査では発見できなかったという釈明に読める。
ただし、あやまちの証拠が調査後に発見されることは、あやまちの証拠を期限内に発見するより、むしろ新たな失点であるといわざるをえないが。


ちなみに、河野談話発表までに日本政府が集めていた資料の詳細は今月ようやく開示され、やはりスマラン事件の資料もふくまれていることが改めて明らかになった。さすがに日本政府も発見していたのだ。
http://www.47news.jp/47topics/e/246352.php

存在と内容の骨子は知られていたが、詳細な記述が明らかになるのは初めて。

判決文には将校らの証言として「州警察の長に、遊女屋用の女をキャンプで選出するよう依頼した」「婦女は○○(将校の名)の要請により州の役人が連れ出した」「女たちは遊女屋に入るまで、どういう仕事をするのか聞かされていなかった」と記載されている。

集めた資料には戦後の県庁調査もふくまれていたそうで、やはり強制があったと認める証言が出ていた。

中将が帰国後の66年、石川県庁で行われた聞き取り調査の記録によると、中将は「連合軍の取り調べとなると、婦人たちもあることないこと並べたて、日本軍部を悪口する」と戦犯法廷に反論する一方、「(慰安婦となる)承諾書を取る際も若干の人々に多少の強制があった」と述べた。


そこで問題となる10月25日の答弁だが、とりあえず質問主意書衆議院サイトで確認できる。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a185007.htm

「これらの記述は、「軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述」にあたらないのか」と質問したところ、「政府の認識は、答弁書一の1から3までについてでお答えしたものと同じである」とのことであった。国民の常識では理解できない答弁である。

この赤嶺議員による重ねての追及に対して、またしても明言をさけつつ前例を踏襲したのか、それとも6月の答弁よりもふみこんだのか、はっきりしない。まだ答弁本文がアップロードされていないのだ。そこで、ひとまず今回は保留しておく。

*1:引用時、いくつか太字強調した。答弁書も同様。