法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

読売新聞アンケートの河野談話項目が明らかに誤誘導している件

参院選が終わった7月22日から23日におこなわれた緊急アンケートとのことで、最後に河野談話について質問しているのだが、そこだけ他項目より文章量が多い。
http://www.yomiuri.co.jp/feature/fe6100/koumoku/20130724.htm

Q いわゆる従軍慰安婦に関して、1993年に当時の河野洋平官房長官が出した談話には、日本
  の官憲が女性を強制的に慰安婦にしたかのような記述がありますが、それを裏付ける資料
  は見つかっていません。あなたは、この「河野談話」を見直すべきだと思いますか、見直
  す必要はないと思いますか。
 答 1.見直すべきだ 42   2.見直す必要はない 35   3.答えない 23

他の項目でも、「ねじれ国会」でなくなったことを「解消」という表現があるが、これほど明らかな誘導はおこなわれていない。
もともと「緊急」とあるように、自民党が大勝した理由を推測させている項目で、「次の4つの中から、1つだけ選んで下さい」と書きながら、「答えない」だけでなく「その他」があったりと、全体として大手新聞社アンケートとしては粗雑な感がある。しかし、河野談話の項目は意図的に誘導しているととらざるをえない。


そもそも、官憲が直接的な強要で慰安婦にした文書資料は存在し、昔からよく知られている。第二次安倍内閣も、共産党議員から追及されて、日本政府が集めた資料に該当する記述があることを認めた。
「慰安婦」問題 赤嶺氏に回答/政府資料に強制証拠

 赤嶺氏は、安倍内閣が「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」(2007年の答弁書)としていることについて、「『政府が発見した資料』とは何か」と質問。答弁書は「内閣官房内閣外政審議室(当時)が発表した『いわゆる従軍慰安婦問題の調査結果について』において、その記述概要が記載されている資料を指す」とのべ、日本軍による強制連行を示す資料である「バタビア臨時軍法会議の記録」があることを認めました。
 同記録は、日本軍がジャワ島セマランほかの抑留所に収容中のオランダ人女性らを「慰安所に連行し、宿泊させ、脅すなどして売春を強要するなどした」と明記。答弁書は「ご指摘のような記述がされている」と認めています。

スマラン事件として知られる官憲による直接連行例のひとつだ。
こうして日本政府が資料収集をおこなった後にも、東京裁判従軍慰安婦問題がとりあげられていた資料が歴史学者によって発見されている。
林博史『極東国際軍事裁判に各国が提出した日本軍の「慰安婦」強制動員示す資料(7点)』 [戦後責任ドットコム]
この他、日本政府が各資料の存在を知った時期や、河野談話発表までに資料がなかったという意味だと答弁した議事録を、scopedog氏が下記エントリでまとめている。
河野談話発表までに「強制連行を直接示す資料」は見つけられなかった、しかし、その後見つかった、という話 - 誰かの妄想・はてなブログ版
たしかに、河野談話発表時に日本政府が文書資料を入手していなかったという意味ならば、かろうじて嘘ではないのだろう。しかしその当時ですら、日本政府がききとりした各証言に基づいていたのであって、証拠がない状態で談話を出したわけではない。
もちろん、過去形ではなく現在形で資料が見つかっていないとした読売新聞アンケートは、明らかに誤っている。このアンケート結果をそのまま世論を反映したものとして信用することはできない。