法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

「やる夫で学ぶ百人斬り裁判」の紹介と、証拠や資料の恣意的な評価について

2ちゃんねる外部の掲示板で投下されていた。本編は「>>1」から「>>511」まで。日本軍人が処刑された中国の軍事法廷ではなく、日本の名誉毀損裁判を要点にしている。
やる夫で学ぶ百人斬り裁判 - やる夫板II - したらば掲示板
南京軍事法廷は拙速だったかもしれないが、処刑された両少尉に全く問題がなかったわけではないこと。自称イザヤ・ベンダサン本多勝一の論争はベンダサンの明らかな勇み足であったこと。日本刀は極めて弱いという山本七平の批判は根拠が薄弱であったこと。稲田朋美弁護士が原告代理人をつとめた名誉毀損裁判では、さまざまな証拠が裏目に出たり反証されたりして、原告の完敗であったこと。しかし名誉毀損裁判を踏み台にして稲田が政治家へと転身したこと。
ざっと見たところ、ざっくりと全体を追いながら、よくまとまっていると思う。百人斬り裁判は原告側に問題があったといわざるをえないので、素直に「やる夫」化すればこうならざるをえないのであるが。


ちなみに作者は書き終えた「>>512」で質問を募集していたが、そこで寄せられた数少ない質問への回答「>>621」で、以前に一部で話題となった「涼宮ハルヒで学ぶ南京大虐殺」の作者であることも明かしていた。
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一見して東中野修道氏の主張を紹介する内容に見せかけて、後半で批判を展開する珍しい「世界史コンテンツ」だ。題材と形式に拒否感がなければ一読を勧める。
ちなみに「世界史コンテンツ」とは、キャラクター座談会形式で近現代について解説するサイト群のこと。流行の発端となったサイトがホロコースト否認サイトだったように、ほとんどが戦争犯罪を否認する内容だったが、そうした先入観を逆手にとったのが「涼宮ハルヒで学ぶ南京大虐殺」だったわけだ。


歴史認識問題で日本擁護する内容ではないのに、作者への質問や批判が少なかったのは、ほとんど「やる夫」の内容を無視して議論がはじまっため。
興味深いというか当然というか、作者へ反論しようとする意見を読むと、「やる夫」で書かれている内容を無視するか、きちんとした情報源を示さないか、まったく関係のない話を始めるかがほとんどだった。
たとえば、本多勝一が『中国の旅』への批判に対して「私は現地で話を聞いた事を書いただけで、その話が事実なのかは確認していない」と答えたという「>>588」。知らないので答えられないと作者は「>>625」で回答しているが、おそらく万人坑をめぐる論争での発言だろう。実際には『中国の旅』の時点で証言に対して留保する表現がなされており、批判に対しては具体的な反論もおこなっていた。
本多勝一記者「代弁しただけ」発言を巡って
他にはカンボジア報道をめぐって、うろおぼえで「プロパガンダを見抜けず共産主義の優しさと持ち上げた」などという「>>594」の本多批判があり、無関係な話をもちだして批判するならユダヤ人の詐称はどうなんだという反論もされていた。ついでに私も事実関係の誤りについて書き込んだので、転載しておく。

714 :24から短編祭りだお:2013/08/26(月) 22:36:28 id:KKmepCNs0
>>594
本多勝一批判サイトから紹介しておく。


「アジア的な優しさ」という言葉でポルポトを評したのは朝日新聞記者だが別人。しかも記事が書かれたのは大量虐殺が始まる前。
ttp://www.geocities.co.jp/WallStreet/8442/research/cambodia/wada750419.html
本多勝一はたしかに他人の虐殺報道を否定していたが、「末端」で虐殺があったこと自体はリアルタイムでも認めていた。
ttp://www.geocities.co.jp/WallStreet/8442/research/cambodia/sokumen.html


本多勝一擁護サイトもついでに紹介しておく。
ttp://www1.odn.ne.jp/kumasanhouse/movement/sinbun_yomitai/peten01.html

むろん調査不足や恣意的な評価があったと思えば、きちんと批判すればいい。本多とは関係ないがアジア人の優しさを特別に賞揚するのは裏返しの差別だし、本多のカンボジア報道についても見通しが甘かったという批判は可能だろう。後年に本多自身が追加取材して『検証・カンボジア大虐殺』という著作にまとめたくらいだ。


しかし、証言者一人を根拠にして擁護できないと評価しても不十分なら、百人斬り報道はどうするべきだったというのだろうか。少なくとも『中国の旅』で百人斬り証言をとりあげた時点で、当時の報道記事や虐殺放言を聞いたという証言や近年の書籍をおさえていた。それでも、あくまで現地の中国人がそう証言したと紹介するにとどめた。
複数の証拠があった百人斬り事件を「事実無根」あつかいするべきというなら、占領したばかりで虐殺の証拠が不足していた時点のクメール・ルージュは「擁護」するべきといわなければおかしい。本多著作の表現を比較すれば、むしろ現在進行形の虐殺を重く見て、過去の事件は歴史の一頁として記述するにとどめている。その態度は「やる夫」において引用されているように*1、本多自身が明言していたことでもある。

128 : ◆CqTVv/I5EA:2013/07/22(月) 08:53:39 id:YgEn.5g.0

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        〃 シi::::::::l  `""゛  ` 'リ (:::)ヤ、:ヽ:::!:','::::::::::::::::',              謝罪もしません。
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            " . ';ヽ     ,、y'´ /シ l::::::ヽ:::::l ヾ; ゛丶        日本がまた侵略戦争の道へと歩む危険があるとき、
               '|!`=tー:::'"/  /'  ハ::;::::il!';::!
    .              'i::: '       リ ソ ヽ'リ、            軍国主義を阻止することこそが重要で、
                  !'i   j       ~ヽ
                  リ 、 /  ―ー '''"""f,             それが真の謝罪になるのです。
                  / _冫'''~            ',
                / ´   ,、     ̄~ ヽ  'i
               l!~    /         ヽ. !
               ソ.    /   ン      、 ', l
               /    /   /          ', ', 'i
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*1:朝日文庫版『殺す側の論理』122頁で該当する記述を確認できる。