法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

世界記憶遺産に南京事件関係資料が登録されたことに対して、いまさら日本南京学会に期待する意見を見かけて失笑した

『日本「南京」学会』とは、日中戦争における南京事件の「研究」をおこなっていた団体だ。会長の東中野修道氏は、『たかじんのそこまで言って委員会』で南京事件の否定論を主張して、一部の注目を集めたりもした。
しかし東中野氏は2007年から2009年にかけて名誉棄損裁判で完敗。団体自体も南京事件プロパガンダだと結論づけて2008年に活動を停止し、2012年に解散した。関係者を2011年に朝日新聞が注釈なくとりあげたこともあったが、かつての影響力は薄れてきている。
日本「南京」学会という団体が何の注釈もなく記述されている件 - 法華狼の日記

日本「南京」学会は「学会」と称してはいるが、日本学術会議の協力団体ではなく*1、あくまで自称にすぎない。しかも名誉毀損裁判で敗訴し、ある判決文では「学問研究の成果というに値しないと言って過言ではない」とまで激しく批判された東中野修道会長がひきいている。権威がないことはもちろん、素人なりに真面目な研究を行おうと努力しているわけですらない。

*1:日本学術会議の公式ページにも記載がない。http://www.scj.go.jp/ja/info/link/link_touroku_na.html


しかしツイッターを検索すると、もちろん批判するツイートが多いが、いまも信じているツイートも複数ある。
その一例が、ツイッターで見かけた[twitter:@tyuusyo]氏のツイートだ。

しかし南京事件否定論ならば何でも良いわけではないらしく、[twitter:@Historian_nomad]氏*1とのやりとりでは藤岡信勝氏や高橋史朗氏を低評価していた。

東中野氏が過ちをさらけだしてしまったため、まだ公式に過ちを認めずにすむ両氏*2が出てきただけと思うのだが、tyuusyo氏が日本南京学界にどのような期待をいだいているのかよくわからない。


ちなみにtyuusyo氏自身の南京事件に対する評価は下記のとおり。やはり歴史認識そのものが怪しげだ。

たしかに30万人は加害国側の歴史学でほとんど採用されていない数字だが、それは否定の根拠として充分とはいえない。大規模な虐殺において、加害側と被害側で推計数が一致しないことは珍しくない。
それに30万人という数字は、日本の歴史学者は採用していないだけであって、ありうる範囲ではないと否定することもしていない。誰にも証明は困難な、あえていえば幻想の数字ではあるが、それを否定するだけの資料を日本軍は残していなかった。


念のため、Historian_nomad氏がいうような日本国内の資料だけでも、相当規模の虐殺事件が起きたことが明らかにされている。中島今朝吾中将の日記のように、捕虜殺害を命じたことを示す資料まである。
「捕虜ハセヌ方針」をめぐって

此七八千人、之を片付くるには相当大なる壕を要し中々見当らず 一案としては百二百に分割したる後適当のけ(か)処に誘きて処理する予定なり
(「南京戦史資料集」旧版P326)

素直に読めば、「片端より之を片付くる」というのは「殺す」ことである、と理解できます。すなわち「捕虜はせぬ方針」というのは、「中国兵が投降してきても受付けずに殺害してしまう方針」ということでしょう。 日記を発掘した木村氏を含め、「南京戦史」のような右派グループも、この解釈を当然のこととしてきました。

むしろ、虐殺の意図を明らかにする文章が見つかっているだけでも、南京事件は他の虐殺事件より史実として確定されていると考えてもいい。
記念遺産をとりけさせるような学問的な根拠を日本政府は持っていない。だからこそ拠出金を停止しようとする動きが報じられているのだろう。

*1:遊牧民@アルタイ山脈でおやすみ on Twitter: "@honin_ice_kuren @satoshin257 そもそも南京事件についての単著書かれてる恩師曰く、「そもそも中国ですら今は人数を問題にしていない、彼らが問題にしているのは今は民間人及び非戦闘員に対する虐殺行為だ、なのに日本はまだ人数を云々している」ってことなので、もう"によると、恩師が南京事件で単著を出しているというが、本当だろうか。もうひとつ、日本政府よりもうまい外交として「「じゃあうちは満洲復員と原爆投下前後の記憶遺産申請出すわ」って言う手もある」とツイートしているが、すでに原爆ドームに代表される広島平和記念碑が本家の世界遺産に登録されていることを忘れているのだろうか。

*2:もちろん過ちをおかしていないという意味ではない。藤岡氏は最近も本多勝一氏に対して「事実とかけ離れた「南京大虐殺三十万人説」を流布させた人物だ」などと見当違いな批判をして週刊誌上で論争をしていた。「南京大虐殺」 本多勝一・藤岡信勝論争