法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』さよならボクのそうじ機/真夏の夜の大航海/ダイスキンドリンク

夏の大冒険1時間スペシャルと題した三本立て。あまり各話のボリュームはなく、調整のために二週分を一回にまとめたかのような印象だった。


「さよならボクのそうじ機」は、無生物をペット化する物語。何度も使われたパターンの物語だったためか、原作者生前は単行本に未収録だった。
原作では掃除機が家出をして終わりなのだが、アニメでは掃除機を探して発見するまでを描く。ゴミ処分場で必死に探している主人公二人をロングショットで見せるクライマックスが良かった。細かな背景美術と粉塵エフェクトで処分場の広大さが印象づけられ、本能で全てのゴミを吸い取ろうとしていた掃除機のけなげさも際立った。
そもそも原作は環境問題テーマと関係ない物語だった。そこを今回のアニメでは改変したわけだが、掃除機が捨てられる経緯などで下ごしらえをしており、とってつけた説教にはなっていない。オチも綺麗で、語りすぎていない。いつものパターンにおさまっていた原作に新しい魅力をつけくわえ、アニメ独自の佳作回にしあがっていた。


「真夏の夜の大航海」は、夏休みにスネ夫の別荘へさそわれ、ひょんなことから難破船をめぐる謎と小さな冒険にかかわってしまう物語。
アニメオリジナルストーリーらしい冒険活劇で、秘密道具の力で意思を持ってしまった難破船でアスレチックのようなアクションをおこないつつ、歴史を超えたハッピーエンドですっきり終わる。結末で明らかにタイムパラドックスを起こしているのだが、岩ばかりの無人島が人の住む街へ一変する描写は印象的であり、SF的な整合性よりも映像作品としての面白味を優先したと思えば許せる。
時間改変を起こすための小道具が初登場した場面は印象的で、リアルに寄せた骸骨作画は恐怖感と迫真性を生み、のび太は恐怖にうちかって難破船を歴史の重荷から解き放つ。先述したSF考証や生態系への影響は気にかかったが、一夏のジュブナイル冒険譚としては良くできていた。
原画陣は普段と少し違い、亜細亜堂の山田みちしろや、なぜかボンズ作画部が入っていた。やや絵柄は独特だったが、動きは全体的に良い。木村哲コンテも素晴らしく、アクションでは落下と上昇をくみあわせ、ホラー描写では全体を見せずに恐怖をもりあげていき、島の街は坂だらけにして実在感を生み出した。


「ダイスキンドリンク」は、苦味に耐えながら飲むことで、特定のものが好きになるという秘密道具が登場。
アニメオリジナルストーリーらしく、展開のひねりはほとんどなくて、どんどん状況がひどくなる天丼オチで楽しませる。ぶっちゃけたいした話ではないのだが、とてつもなく苦い薬を飲んだドラえもんたちの顔芸が楽しく、娯楽回と思えば悪くなかった。