法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『コール』

2001年に公開された、ダコタ=ファニングが映画に出演した初期の作品。


まず、誘拐の主犯が被害者宅に居座って、母親を監視しながら指示を出すという導入は面白い。加害者と被害者が近くにいることで、映像も物語も盛りあげやすいし、被害者が監視されているため警察に連絡できないというサスペンスも生まれる。
しかし、続く展開は期待はずれ。被害者と加害者が丁々発止のやりとりをするかと思えば、母親は興奮するばかりで頭脳を働かせることなく。そして父親の側にも共犯者が行って、少しは状況が進展するかと思えば、こちらもほとんど力技で解決していく。工夫は父親が筋弛緩剤を注射する展開くらいで、加害者も被害者もその場しのぎの行動ばかり。
そして被害者と加害者が衝突しながら一箇所に集まっていき、大がかりなカーアクションへ移行する。飛行機までからむアクションは派手で見ばえはするが、期待していたサスペンスとは異なる方向性に終わった。
誘拐犯の背後に隠されていた動機も、大したひねりはなくて今一つ。伏線も、子供の喘息を知らないくらい準備不足な犯人が、なぜか父が昔に勤務していた病院だけ知っていたということくらい。


他、誘拐犯の動機が映画で語られたとおりなら、そもそも先に4回もの連続誘拐事件を起こす意味は感じられない。原作小説では説明されているらしいが、それを削除するならば先行する連続誘拐事件も削るべきだった。
父母子3人を誘拐犯3人がそれぞれ分断隔離し、24時間以内に仕事を終わらせようとする基本設定には魅力があったが、それを効果的に映画化できないまま終わった。惜しい作品。