法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『トータル・イクリプス』のSF考証

hageatama-氏の「基礎知識講座」について少し。
トータル・イクリプスを楽しむための基礎知識講座(基礎って量じゃねーぞ!) - はげあたま.org

米国はあいかわらず世界最強国家.一方,ハイヴの建設を許したソ連や欧米諸国は国土を捨てるしか無く,申し訳程度の国力.

BETA殲滅後の世界覇権をも視野に入れてる米国は対人・銃撃重視だったり,自国の領土を取り戻さなきゃいけない欧米諸国はハイヴ攻略や平野部による殲滅戦重視だったり,

本題ではないところで、「欧米」だと「米国」もふくんでしまっているので、欧州が正解だと思われる。


そしてロボットアニメとして成り立たせるための設定「光線級BETA」について。

超重要項目その2.ガンダムで言うところのミノフスキー粒子のような制約的設定.

ここで、あくまで過去のロボットアニメ設定がそうであってように、エクスキューズの設定ということは理解できる。

人類側の航空戦力をほぼ壊滅させ,戦術機メインの戦場へと変えさせた張本人.

個体数が少ないのと,装甲の同じ箇所に数秒程度は耐えられるコーティング技術,確実に撃ち落としてくる事を逆手に取ったALM(対レーザー弾頭弾)によるレーザー減衰,BETAの同士討ちが絶対に無いことによる射線の判別などの要因により,かろうじて戦術機による対応が出来ています.

後の「戦術機」の説明でも、「(棒読み)」と補完したくなるような白の切りとおしぶりで、すがすがしい。

光線級の出現により航空戦力はほぼ無効化され,かつ複雑な構造のハイヴ内侵攻に踏破性も求められた結果,空飛ぶ人型ロボットが開発されるのは必然ですね.どこにも疑問を挟む余地はありません.

ただ、航空戦力やミサイルや遠距離砲撃が使えないという設定は、地表から接近して戦う説明でしかないことも明らか。直立二足歩行が必要とされた設定も欲しくなる。
過去のロボットアニメ設定と比べて目新しいアイデアを導入しているわけでも、過去のロボットアニメ設定への皮肉をおりこんでいるわけでもない。人型をしていること自体にも設定を用意していた過去のロボットアニメと比べて、むしろ後退している感がある。


たとえば『超時空要塞マクロス』では、異星人の技術を応用しつつ、巨大な異星人と格闘するためサイズを合わせたという設定だが、企画初期はロボットが異星人のふりをするというパロディ的な案があった。同様に『トータル・イクリプス』も戦術機の形状や動作がBETAの誤認を生むという設定で良かっただろう。
高橋良輔監督の『ガサラキ』では、異星人から古代に与えられた人造巨人技術を応用しているという古典的な設定に加えて、手足があれば足一つ失われても三点支持で歩行できるという新たな観点をつけくわえていた。つまり、どちらかといえば四足歩行に近い新しい概念で移動する機械が、たまたま直立した状態で人型に見えるという設定だった。実際、人型兵器が互いの全能力を発揮して戦う第24話では、匍匐前進したり、ロケット付スキーで滑ったり、ワイヤーで牽引して移動したり、火薬で杭を打ち出すことで応急処置的に歩行したりと、過去の映像作品で見たことのない戦闘がくりひろげられた。



肝心の基礎が弱くて面白味が薄いと、設定量の多さは逆に、設定が薄く膨張しているよう感じさせてしまう。
原点のようにゲームであれば、背景設定はルールと見なして、そういう枠組みで戦うこと自体を楽しめば良いだろう。しかし視聴者が参加できないアニメでは、設定自体も面白くあってほしい。
地表を這うように飛行することを目的とした兵器ならば、たとえば足に見えるのはホバー時に機体を固定するためのアンカーにすぎないという設定で、歩行していると見える場面もアンカーを交互に地面に打ち込んでいるだけ……とかだったら、まだ納得できたかもしれない。


その意味では、パイロットスーツのフェティッシュなデザイン設定は面白いと感じた。特に(2)が、実際の作品描写にも応用できそうで良い。
はてなブックマーク - トータル・イクリプスを楽しむための基礎知識講座(基礎って量じゃねーぞ!) - はげあたま.org*1

(1)戦場に不必要な羞恥心の剥奪:よって訓練兵では透明なのが正規兵では不透明へ (2)負傷時の対応:負傷部を確認しやすく,施術時には分解液にて破りやすくなります (3)エロゲだから:言わせんな恥ずかしい 2012/07/23

*1:引用時、丸数字をカッコ内数字へ変更した。