法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』白亜紀へ家出

番組内や次回予告では言及されていなかったが、おそらくスネ夫誕生日SPとして制作されたアニメオリジナル中編ストーリー。脚本は藤本信行。
ドラえもん』で恐竜にかかわる冒険は数多く、今回は必ずしも新奇性がないかもしれないが、出来そのものは良かったと思う。恐竜世界冒険記として映像も物語も申し分なし。
個々の目的意識がはっきりしているので、多視点で物語が進行しながらも混乱することなく、素直に没入することができた。


物語は、白亜紀へ家出したスネ夫と、助けようと追いかけるドラえもん達の2視点で進行してする。恐竜の母子とスネ夫ドラえもん達、ディスコミュニケーションしつつ互いを思いやることで距離を縮めていき、それぞれの再会へ収束していく脚本構成もたくみ。とりちがえによる迷惑な母の愛が、いつしか真実のそれと感じさせるようになり、家出したスネ夫が自身をかえりみていく流れも無理がない。
GPS人工衛星で居場所を特定するため白亜紀では使えないことや、ティラノサウルスに相応の子育てを行う知能があるような、細かいSF描写も良かった。


安藤敏彦と楠葉宏三総監督が連名でコンテを手がけており、恐竜や白亜紀世界のスケール感は、劇場映画と比べても遜色ない。作画もまんべんなく良くて、リアリティレベルを落とさない程度の激しいアクションで目を楽しませてくれる。連名であるためか、それとも母子愛で感動させる物語の骨格がしっかりしているためか、通常の安藤コンテと違ってスラップスティックな笑いは抑えられていた。
おそらく恐竜や舞台背景の設定は映画『ドラえもん のび太の恐竜2006』を流用したものだろう。しかし同じ地形でも状況を全て変えているので新鮮味がある。開けた湖畔ではティラノサウルス翼竜から子供を守ろうとして奮闘し、断崖絶壁では巨大恐竜2頭が相手を押し出そうと位置取りしながら激突するところにドラえもんが乱入。開けた空間でのアクションが多く、独特の開放感があった。