法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『KITE LIBERATOR』

バンダイチャンネルの無料キャンペーンで視聴した、梅津泰臣監督による約1時間のOVA
美少女の殺し屋が主人公の成年向けOVAからスピンアウトした一般向け作品だが、独立して見ることができる。作画は素晴らしいし、B級アニメとしての見せ場は存分にあった。


しかし、尺の割りに要素をつめこみすぎている。日常の裏で殺し屋をやっている美少女と、特殊な宇宙食で宇宙飛行士が怪物化した宇宙基地のサスペンスが同時進行し、最後に激突するのだが、どちらか一方だけで充分だろうという気になる。
どちらもB級アクションによくある題材とはいえ、訴求性の方向が異なっていて、食い合わせが悪い。


仮に、デフォルメされた絵柄のアニメであれば、異なるリアリティが同居していても統一感がはかれたかもしれない。
だが、キャラクターデザインもつとめた梅津泰臣監督の作画は、繊細な描線を重ねていた過去の絵柄から、かなりリアルで硬質な絵柄へと変化している。作画オタク向けにたとえると、キャッチーな絵柄のうつのみやさとる*1
リアルな日常の裏に美少女の殺し屋が暗躍するファンタジーか、リアルな宇宙活動や現代社会へ怪物が闖入するデザスターか、どちらかを選んで作品化すれば、もっとまとまり良くて楽しめる作品になったと思う。


世界観の統一を気にせず雑多な要素を取り込む梅津泰臣監督の作風は、別の成年向けOVAからスピンアウトしたTVアニメ『MEZZO』でも問題だと感じていた。
ただし『MEZZO』では、幽霊などが登場しても、物語のバラエティを広げる機能があったと思う。各話で完結していたから、食い合わせが悪くても、目をつぶって次回を見ることができた。
この作品は1話完結の体裁になっているから、目をつぶることができない。しかも、戦いの決着が素直についたならまだしも、最後に怪物化した人間が復活して主人公と対峙して終わるため、おさまりも悪い。オチそのものはB級SFのお約束ではあるが、雑多な要素をごった煮した作品なのだから、きちんと落としどころをつけてほしかった。

*1:そう思いながら視聴していると、群集にそれっぽい絵柄の者が登場して驚いた。そして、本当に原画を担当していたことをEDクレジットで知って笑った。