法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『BECK』雑多な感想

以前にしっかり見たのは序盤だけで、残りは作画のいい場面を拾い見ていっただけだが、今回は通して最後まで視聴した。小林治が監督およびキャラクターデザイン、複数回のコンテや演出、さらにはシリーズ構成と全話脚本を手がけた。
作画がいいというより、キャラクターデザインから余剰を排してレイアウトと動きで見せる、Aプロ調な作品といったところ。良い意味でマッドハウスのふところが広いと感じさせてくれた。ただ、小林監督の絵はクリンナップしない描線の味わいも良いのであって、一本の単調なアニメらしい描線にまとめられると持ち味を殺されたと感じるところもある。だから普段と異なる描線で見せたイメージシーンに、最も絵として魅力を感じた。一方でアニメとしては、小林監督と雰囲気が違う梅津泰臣作画監督のLive14「Dream」が、正解と感じたところもあった。他の作画は松本憲生が半パートの原画を手がけた回も良かったが、柳沼和良コンテ演出のLive22「前夜祭」がベストかな。
物語もまずまず。脚本を監督が全話手がけただけあって、微細な心の動きがきちんと話をまたいで表現されていたように思う。ただの悪人に見えたキャラクターが後に良い面を見せた時、矛盾を感じさせるようなことがなかった。海外から暗殺者の登場とか出会う悪役が音楽好きで最終的に和解できるとか、起きている出来事は『けいおん!*1よりリアリティがないのに、主人公にとって御都合主義とならない苦労をまじえて淡々と描いているから、ずっとリアリティを感じたところが興味深い。ツッコミどころになりそうなところを、きちんとつぶしていたところも良かった。

*1:続編がなければ、いつまでもバンドを続けるという結末も未来の夢にすぎず、希望に満ちた青春の一頁を切り取った物語として、現実にも充分ありえる内容だと思う。比べると『BECK』は全米ツアーまで描いているから……