法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』日食を見よう/まんが家ジャイ子先生

八鍬新之介演出回。後半は誌村宏明コンテ。作画監督は三輪修とをがわいちろをで、なかなか映像は良かったが、致命的と思える間違いが一つ。
前後半それぞれ、時事ネタのアニメオリジナルと、原作で珍しい連続的な成長劇の映像化。


Aパートはサブタイトルのまま、日食を見ようとする話。当日の天気が曇りがちになりそうという脚本も、見事に現実通り。
日食について実物ミニチュア大百科で説明する導入部は、うまく原作の「実物ミニチュア大百科」から引っぱっている。地球をどけて、のび太自身が日食の光景を擬似的に見るところも、映像で描写できるアニメならではの良アレンジ。
ジャイアン達と競争して、どちらが早く雲の上で日食を見られるかという展開から、気づかず日食の時間がすぎていて、ドラえもんが自身の頭を使って秘密裏に日食を再現する大オチも良かった。『2001年宇宙の旅』からBGMを引っぱるだけでなく、星が直列する有名なカットまで引用して、じっくりオチを明かしていく無駄な壮大さに大笑い。
しかし……金冠日食の間、青空なのはどうなのだろう。数日後に現実と異なることを子供視聴者でも知ることができるわけで。実物ミニチュア大百科では原作通りに部屋を暗くしていたのに、なぜだ。


後半はジャイ子が漫画家を目指す話。リニューアル後では真摯に漫画家を目指しているエピソードがまだ映像化されておらず、ギャグ漫画家を描こうとしている前振り回があったくらい。そして今回、待たせただけの内容にはしあがっていたと思う。特に、天候変化を描いて、ジャイ子の心情や立場を演出したのは好アレンジ。
ただ一つ、原作ではジャイ子作品がパロディと露骨だったところが変更。今回の作品は画面からパロディ性が明らかではない。原作では、漫画が出てきた時点ではギャグと思わせて、実は後半にジャイ子が自己嫌悪する伏線だったという二重構造だった。原作当時は代表的な少女漫画が固定されていたし、花の24年組もいたから、パロディ性が読者にも伝わりやすかったので、今回に変更されるのはしかたないか。代わりのように、作中の少女漫画誌はそれっぽくパロディしていた。