法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』

何度も制作の報が聞こえては中断し、西粼義展プロデューサーの製作総指揮で2009年に完成して公開された作品。西崎PDは監督名義でもクレジットされているが、実質的な監督は旧作にも参加していた白土武チーフディレクターと、小林誠副監督*1だろう。石原慎太郎都知事が原案をつとめたことでも悪名高い。
2時間15分というアニメとしては長い尺に、わりと戦闘シーンを詰め込んでいたので、予想していたよりは飽きずに見られたのだが、総合的には評価しにくい。


物語は過去シリーズから連続しており、作中で過去作品の映像も使用されている*2。様々な異星人が人間と同じ姿をしていて問題なく会話や通信できることも、過去作品の延長と考えればつじつまはあっている。
しかし、そもそも過去作品の延長であえて現代に作る意味が見当たらないのは問題だろう。レトロな感覚や懐古趣味を楽しませるというにはデザインや音声が変化しすぎだ。そのためか、旧作音源を使用した効果音にさしかえ、映像も追加変更したディレクターカット版も今年3月に発売されている。未視聴なので評価はできないが。
一方で、新作アニメとして楽しむにはOVA『YAMATO2520』と比べてデザインが後退していて、演出も台詞回しも古典的すぎる。新しかったのは、羽原信義監督がメカニック演出を担当し、3DCGで制作された戦闘演出くらい。ここだけはメカニックのギミックもこっていて、空間の広がりも表現されていて、動きまわるカメラ視点で立体感ある戦闘が楽しめた。


キャラクター原案は国友やすゆき担当で、アニメーション用のキャラクターデザインは旧作にも参加していた湖川友謙
しかし主要キャラクターの多くが過去作品から引き続いており、佐渡酒造や真田志郎*3のようにデザインが特徴的なキャラクターは松本零士色が濃く残っている。冒頭で退場する古代雪も微妙に松本ラインに近い。新世代のキャラクターは多くが古臭い若者像を一歩も出ず、活躍の場面すらほとんどない。
新世代キャラクターは、若いアニメファンが共感しながら見るというより、西崎PD世代が自分自身では理解あるつもりで元気のいい若者像を幻視しているような気がする。そう思って見ると、若者に旧作メインキャラクターが尊敬され賞賛される描写に、西崎PD世代の自画自賛臭が感じられてしまい、見ていてつらかった。
そもそも国友やすゆきデザイン時代が半端に古臭く、特に絵がうまいわけでもないのに参加した意味がよくわからない。コスチュームデザインも過去作品を踏襲しているため、完成映像としては湖川友謙の絵柄ばかり印象に残る。独特のアオリ作画が多用されて、作画オタクとしては楽しいのだが、デッサンが正確すぎて動きに面白味が少ない。娯楽アニメだと、もう少し作画に起伏あるぐらいが楽しみやすい。作画枚数も使っているため、予算だけ使った宗教アニメっぽさがある。


そして物語についてだが、これが一番つらい。
移動性ブラックホールによって地球が飲み込まれそうになり、地球人は移民を計画。移民先のアマール星と協力して障害となる星間国家連合との共同戦線をはることになる、というのがメインストーリー。やたら壮大な語り口で地球の動物を描いたりして、宗教アニメっぽさの原因はここにもある。
もちろん、ヤマトは善意と正義感をもって移民先のアマール星の女王*4に協力し、星間国家連合の支配を打ち倒すわけだが。これは植民地を解放し自由の大切さと真の平和を謳うといえば聞こえはいいが、戦艦大和に象徴される軍備をもって西欧列強の支配からアジアを「解放」した「大東亜戦争」の題目そのままだ。石原慎太郎原案と聞いた時に予想していたほど好戦的ではないが*5、ある意味ではもっとひどい。旧日本軍を擁護しないよう慎重に描写する気配は皆無で、何のひねりもない。
西崎PDや石原都知事の思想背景だだ漏れを抜きにしても、アマール側があっさり地球移民を受け入れて、星間国家連合が共通の障害になる展開そのものが御都合主義。移民先の住民がこころよく迎えてくれる幸運について、まともな説明が作中にない。わかりやすい敵に、わかりやすい味方と、世界観が単純すぎる。逆に、星間国家連合が地球の移民先をアマールに押しつけて、アマール政府が反発する展開であれば、ぐっとドラマらしい葛藤が生まれたかもしれないが。
それでも、2時間ほどで地球の移民が成功するかと思われた矢先、星間国家連合を主導していたキャラクターが移動性ブラックホールの原因でもあったことが明かされる。唐突に全ての問題が単体の敵キャラクターへ集約され、それをヤマトが倒して終わるという、蛇足と呼ぶのもはばかられる超展開*6。試写会で2通りの結末を見せて投票で決定する企画*7で決められた結末らしいが、最初から2択しかない状態で選んでも良い映画に修正することはできないということか。
また、キャラクターアニメとしても見所が少ない。わざわざ新規にデザインされて登場された新世代が活躍しない一方、登場時間が圧迫された旧世代もあっさりした描写に終始する。特に、旧作の人気キャラクターであった古代雪のあつかいがひどい。冒頭の戦闘で、艦橋の攻撃で服が溶けるように破けて半裸になっていく描写がツッコミどころ満載なのはともかくとして、そのまま物語から退場。行方も生死も不明のまま映画が終わって唖然とした。かわりのヒロインといえば、思春期をむかえている古代夫妻の娘と、ヤマトの諸君に感謝する女王といったところ。これも悪い意味で中年男の欲望がだだ漏れである。

*1:メカニックデザイナーとして有名で、その方面の仕事は素晴らしいものが多い。演出家としては、なぜか『シックス・エンジェルズ』『ICE』と秋元康原案作品で監督をつとめている。監督作品の評判は、まあ……

*2:同一人物でも、絵柄がデザインレベルで変化しているために違和感が大きい。OVA超時空世紀オーガス2』のように、ずっと後で後日談が制作されたアニメ作品でよくあることではあるが。

*3:いわゆる「こんなこともあろうかと」で誤解されている人。この作品でも実質的に「こんなこともあろうかと」なことをやってのけるが、隠しておく理由がはっきりし、あくまで補佐的な行為だったので、意外と納得のいく展開だった。

*4:褐色の肌をもつ、オリエンタルなデザインというところがまた……

*5:ただ、攻撃される前から地球側が星間国家連合を敵と見なし、作中で既成事実としてあつかわれるという描写はある。こういう描写について、ディレクターズカット版では攻撃された後に敵対視するよう順番を入れかえているそうだ。http://mag.autumn.org/Content.modf?id=20120131092706

*6:比べると、『SPACE BATTLESHIP ヤマト』の結末は、蛇足なりに超展開というほどではなかった。http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20120411/1334162203

*7:http://b.hatena.ne.jp/entry/hochi.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20091123-OHT1T00005.htm