法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『スイートプリキュア♪』第47話 ピカーン!みんなで奏でる希望の組曲ニャ!

悲しみは必ず乗りこえ可能と主張するので、プリキュアネオリベ(キリッ)。


いや、上記のようなことを冗談半分ながら思いつつ、これでは現代のアニメ作品として説得力が薄いと感じながら見ていたのだが……プリキュアのように考える者ばかりではないとノイズが反論したところで、雰囲気が面白い方向へ変わった。プリキュアはノイズの反論を正面から受け止めつつ、ノイズ自身が語る差異を個性と肯定して、悲しみの集合体をも認める。そうして戦いながら手をさしのべた流れに感心した。
プリキュア』シリーズのラスボス説得としては、『ふたりはプリキュア Splash☆Star』以来の説得力があった。弁論術として巧いし、声優が熱をこめた口調も力強いし、説得する流れとして非常に綺麗。


「絶対に許せない!」が決め台詞だった作品で、最後の敵をプリキュアが許したという成長劇でもある。
過去にプリキュア同士で衝突してきた描写の多い作品だからこそ、ノイズは自分自身だとプリキュアが回想して認識する流れにも説得力がある。ギスギスした作品だからこそ、それを認めて成長したプリキュアを見て、素直に感動できた*1
今回は大野敏哉脚本回だが、こういう作品がやりたかったという意識が伝わってきて、この作品のシリアス回で最も楽しめた。序盤では疑問点を多々感じたが、作家として単純に劣っているのではなく、単に1年間のシリーズ構成に慣れていなかっただけなのかもしれない。


今回は河野宏之作画監督回だが、癖の強い絵柄に隠れた巧さを充分に引き出していて、映像面でも見所が多かった。演出を担当した田中裕太は、今後も注目していきたい。
暗がりにいるため影無し作画のように描線の美しさが楽しめるアバンタイトル、ノイズの底知れなさを演出する表情作画と声優の好演、空間の広がりを感じさせる空中戦、過去の技を連携して使用する必殺技合戦、倒すかに見せて手を届かせる場面の音響演出と、まんべんなく見所があり、気分がさめるような粗もない。
ただし「きせきのへんしん」が登場したタイミングだけは微妙かな。登場期間が短かったのは、線が多すぎてアニメーターの負担が大きいためだろうか。それでも、せっかく羽があるデザインなのだから、空中から落下した時点から変身していれば納得感があったのだが。


ちなみに今回が最終話かと思っていたので、ハミィが消滅したまま『スマイルプリキュア!』の予告が始まったことにビックリした。
しかし、おかげで時間いっぱいのアクションと感情をぶつけあうプリキュアとノイズの姿に、実質以上の緊張感をもって視聴することができたのかもしれない。

*1:過去のプリキュアは健全なキャラクターが多かったため、敵の問題を自分自身の問題ととらえることが少なかった。