法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ワの字で空を行く/変身!ドラキュラセット

前後半ともに短編原作からのアニメ化。鈴木まりあ作画監督清水東脚本で少しずつ原作と違っていく前半と、ほぼ完璧に原作の流れを再現した後半という対比だった。


前半は、大声が巨大なカタカナ文字になって固まる秘密道具「コエカタマリン」を乗り物として応用。ドラえもんが秘密道具を部屋に置き忘れるのはいつものこととして、それを手に取ったのび太コエカタマリンのことをすでに知っている構成が、少しばかり違和感あった。前半にコエカタマリンが初登場する話をアニメ化して、後半に今回の話を持ってくるべきだったのではないか、と少し思った。もっとも、前後の繋がりを深く説明せずに既存の秘密道具が使われることは原作でもよくあることだが*1
のび太が声を捕まえるため壁に反射させることを思いつく展開では、犬に追いかけられて偶然に壁へ声を当てたという描写を足して説得力を高めている。乗りやすい声を研究するため様々な声で叫ぶ描写も、尺に余裕があるアニメらしいくり返しギャグで楽しい。
一方、のび太達が帰れなくなる終盤は山の不自然な形状からして完全にコント。ここは帰った後でコエカタマリンの声で登山客が怪我をしたことを知る原作が好みかな。帰る方法を模索する描写をして密度を高めれば、これも悪くない独自描写だったかもしれないが、特に工夫した描写も見当たらず尺稼ぎにしか見えなかった。
ママへコエカタマリンを飲ませたという原作を踏襲した描写を、最後に回収したオチは良い。単に冒頭と同じように遅刻するだけという原作より上手くひねりが効いている。


後半はほとんど原作通り。ほとんど文句のつけどころはないが、少しも恐くないドラキュラ物語の場面は、通常シーンと区別して作画してほしかったかな。何も知らずに見たら『ドラえもん』と気づかないくらいに*2
しかし、のび太が吸いにいったしずちゃんの作画はなかなか艶めかしくて、吸血鬼ものの作法を守った描写で好感が持てた。

*1:てんとう虫コミックスは一種の傑作選であるため、初登場した回が収録されないまま使用されている秘密道具もあった。

*2:比べると、GYAOで見た『エスパー魔美』第7話の冒頭は凄かった。