原作通りのAパートとアニメオリジナルBパートの2本立て。
今回は腰繁男がABパートの演出を担当し、コンテを別に立てる方式。全体を通して作画も撮影も美術も隙がなく、ベテランの力が良い意味で発揮されたのではないだろうか。特に、場面ごとに光源が移りゆく風景を違和感なく見せたところは見事。
Aパートでは、何度か原画で参加していたアニメーターそ〜とめこういちろうが『ドラえもん』での初コンテ。基本的に原作通りだが、全裸の股間を障害物で絶妙に隠し続ける演出に大笑い*1。ジャイアンから暴力をふるわれるたびに服が脱げていく描写も、アニメならではの動きで見せる面白コメディ。
ジャイアンの下手糞な絵を映す描写もアニメとして良い改変。全裸がらみで警官を登場させていることも、笑いを足しつつオチを強化しており、良い描写追加だと思う。
Bパートは総作画監督の丸山宏一*2が作画監督を担当。おかげで作中作アニメ『虹のビオレッタ』の作画がいい。ポスターのキャラクター作画も最新流行を取り入れた「萌え」絵柄だ。
ストーリーは前述したようにアニメオリジナルで、中盤まで秘密道具もほとんど活躍せず、妹の行動にやきもきする兄2人の物語。派手な出来事がほとんど起きないことを逆手にとって、街並みをていねいに描きながら良い意味で日常話を展開していく。
アニメーカーで制作した自主制作アニメをアフレコしていたという混沌とした真相も、原作の様々な描写を拾っていて、納得できるようにしあがっている。ジャイ子ちゃんが自作マンガをアニメ化したいと考え、完成まで周囲に隠しておいて驚かせたいと思うのは無理がない*3。スネ夫は原作で「アニメーカー」が登場した回においてアニメを独力で自主制作しようとしていたし、多趣味にして創作能力も高いスネ吉が協力することも自然*4。
ドラえもんとジャイアンがアフレコするオチも、アニメ声優が声を当てているアニメキャラがリアル絵柄な作中アニメキャラに合わない声を当てるという、こうして自分で説明しながらわけわからない状況の楽しさがあった。