法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『誰も守れない』

犯罪加害者の親族を保護する刑事を描いた映画『誰も守ってくれない』の、序章にあたるスペシャル2時間ドラマ。
刑事が犯罪被害者の親族を保護する姿を描く。


正直にいうと、かなり期待外れ。
かつて立件を見送られた犯罪被害者の汚職が事件の要因ではないかと警察から疑われたり、マスメディアやインターネットのデマで傷つけられるまでの描写までは良かったのだが、中盤から明らかにテーマがずれていく。
特に、主人公の相棒が拉致され、大量の覚醒剤を打たれて放り出されてから。禁断症状を起こした相棒が本音をさらけだし、家庭崩壊している主人公を批難するクライマックスは意図不明。被害関係者のドラマと関係ない。どちらかといえば薬物依存をテーマにしたドラマででもやるべき展開だろう。犯罪被害者が隠していた本音をさらけだす場面を作るにしても、もっと別の、自然な描写があったはず。
患者の個人情報公開をかたくなに拒んでいた被害関係者が、終盤になって主人公へカルテを見せ、そのまま事件が解決してしまうのも御都合主義に感じた。


終わってみると、事件とは関係なかったのに犯罪被害者の汚職が暴かれる後味の悪さが印象に残ったくらい。
一つ一つは物語を成り立たせるため許せそうな嘘でも、多用されれば他の刑事ドラマ一般とリアリティは大差ない。しかもそれら多すぎる嘘のため、テーマがぼやけてしまっている。テーマを明瞭にさせるためフィクション性を高めたのなら、それはそれで許せたのだが。
たとえば、最後まで加害者は捕まることなく、被害関係者の生活が滅茶苦茶にされたまま主人公は次の事件へ取りかかって終わるような、そういう展開にすればどうだったろうか。あるいは、主人公が被害関係者保護をやめたずっと後、映画の冒頭にあたる時期に容疑者逮捕の報を聞く、とか。そうすれば時間内に事件が解決してしまう御都合主義ぶりも薄れるし、犯罪加害者の親族を描く映画と差別化もできただろう、と思ったのだが……