法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『オールド・ボーイ』

マンガを原作とする、韓国で制作されたサスペンス映画。カンヌ等で映画賞も取っている。
『CUBE』『SAW』とも似た、閉鎖環境を舞台としたデスゲーム……かと思えば、解放されてからの監禁動機の探索が主眼。アクションもロマンスも手堅く押さえつつ、悲惨な状況に一抹の救いを求める結末へなだれこむ。娯楽性と文学性*1のバランスが絶妙で、B級映画の見本。仮の真相も説得力があるし、監禁の意味全体をひっくり返す真相にも、よくできた推理小説に似たカタルシスがあった。
年月の経過に合わせ、役者がきちんと肉体改造して見えることも感心。……本来は当たり前なのだが、実写邦画大作のていたらくと比べると悲しくなる。


ちなみに原作マンガは日本の劇画。比べてみると、かなり映画の役者が原作のデザインを踏襲しているとわかる。長い監禁生活の間に体を鍛えた主人公から、酷薄な表情の敵役まで、原作を尊重しつつ肉体ある存在として映画化している。
なお、最後に明かされる真相は原作と映画で異なる。原作の真相は映画の偽真相の一つであり、結末を変えることで読後感や主題が全く違っている。映画の方がまとまりよく話が閉じており、監禁の必然性もあるが、原作は原作で長期連載漫画らしく途中経過の楽しさがあっていい。

*1:さほど好きな言葉ではないが、他に適切な単語が思い浮かばない。