〜アラグマという二つ名は本当に格好悪いと思う〜
ちまちまと嫌らしく数で攻めるセルゲイ中佐は有能らしくて良いが、受ける側のソレスタルビーイング側に失敗が目立つので残念なところがある。最初の作戦ではなく、何度か試してようやく網に引っかかった、等の展開にした方が自然だったのではと思うのだが。
ともかくセルゲイは数少ない常識人*1なので感情移入しやすく、物語を楽しむ土台として不安がない。おかげで初の実戦でソレスタルビーイングが経験不足を露呈する様子も受け入れやすかった。
武力介入が続けられた結果として紛争が減少していったという冒頭の解説は、意外と納得できるところがあった。
第4話のタリビアとユニオン、第7話のモラリアとAEUといった関係を思い出せば、ソレスタルビーイングは各国家群の関係を強化するように動いていることがわかる。秩序が保たれた国家郡内で先導を続けたい大国と、紛争を停止させたいソレスタルビーイングは、明確に意志の疎通をしていないながらも共犯関係にあるとすらいえる。ソレスタルビーイングが弱小勢力にとって鞭になる結果、有力国家は振り上げた拳を下ろしやすく、そして飴を差し出しやすくなるだろう。一見するとテロが拡散する現代をモデルにした世界観だが、政治状況は冷戦に近いものがある。
また引き合いに出すが、『DEATH NOTE』でキラと司法が互いに利用しあっている状況と考えればいいかもしれない。紛争は殺人と比べて衝動性が少ないだけに、制裁効果はずっと期待できるだろう。司法と敵対しながらも情報収集を司法にたよっていた*2キラと違い、状況によっては大国が積極的に情報を流してくれる利点もある。もちろん実際に信頼しあう関係ではないから、隙を見てデスノートを奪う……今回のようにガンダムを鹵獲しようともするだろう。
『DEATH NOTE』で犯罪率が下がっていたことを許せれば、『機動戦士ガンダム00』もフィクションとしては充分に納得できる展開だ。散発的で衝動的なテロは続くだろうが、国家同士の軋轢や衝突は減少しても不自然ではない。
ただ、超技術を持つ主人公組織と世界を三分割する大国が共謀し、弱小勢力の不満をそらせるという現在の構図が、どうにも美しくないのも確か。戦闘が主要勢力にとって予定調和となり、勝負の緊張感がなくなる欠点もある。その予定調和で潰される人々の悲惨さこそ描かれつつ、いまだ背景でしかないこともメカアクションの興奮をうばう。
それでも反抗する側を描くと思われた前回の国際テロネットワークは実動部隊をあっさり消されてしまった。今回のように強者同士の知恵比べみたいな形でないと、アクション物として物語を楽しめないのは娯楽作品としてどうなのか。