今枝仁弁護士が記者会見で涙を見せた。
どのような経緯で涙を流したのか報道だけでは判然としなかったが、ブログで理由の一端が説明されている。
http://beauty.geocities.yahoo.co.jp/gl/imajin28490/view/20070921/1190329867
被告人の言っていることは、本当に、真実なのですか、本当に、反省しようとしているのですか、あなたがた弁護人は、人間として恥ずかしくない弁護活動をされていますか、と。
私は本村洋さんの気持に真剣に応えようと思う。
社会のほとんどが私の思いを誤解し、非難しても、本村洋さんに少しでも伝われば、それでもいい。昨日の記者会見では、そういう思いがきわまって泣いてしまった。
ああいう場で泣いた行為は、未熟であり、卑怯であり、遺族として人前で涙を流さない本村洋さんに対しても、すこぶる非礼な行為であったことを真摯にお詫びしたい。
そして、1番泣きたい(泣いてもいい)立場にありながら、人前で涙を見せない強さ、遺族としての社会正義実現に向けての強い意思、立場は違えど本村洋さんを心から尊敬する。
各所で反発されいる「なめないでいただきいたい」という被告発言が、検察の挑発的な質問に対する反発ということも説明されている。
http://beauty.geocities.yahoo.co.jp/gl/imajin28490/view/20070921/1190331562
検察官が、「私は見たんだが、あなたは、先ほど、遺族の意見をメモしながら、すーっと1本線を引いて消したね。あれはどういうことか。」と聞いたのに対し、そのメモを示し、「そんなことはしていない。」と弁明した。
被告人は、そのメモを、検察官と被告人に示し、そのような線は入っていないことを示した。
弁護人が、検察官が新たな濡れ衣を着せようとしたと反発し、「検察官は、誤りについて、撤回し謝罪されたい。」としたのに対し、検察官は、「その必要はない。」と返した。検察官が被告人への偏見から勘違いを起こしたことに、怒りを覚えた私が、被告人に、「君に対し厳しい見方をされてこういう誤解も生じるから、これまでも、そしてこれからも、君に対してこういう誤解や濡れ衣(※検察官が、メモに線を引いたと非難したことを象徴)は、ずっと続いていくだろうが、その中でも君はくじけず強く生きていけるのか。」と聴いたところ、被告人が「はい。・・・検察官は、僕をなめないでいただきたいですね。」と答えた。
反省のない不遜な態度とみる方も多いだろう。
そう見られる状況や内容であることは、否定できない。
(率直に言って、私自身も「深追いしすぎて、大失敗した。」「被告人に、ご遺族に、申し訳ないことをしてしまった。」と思い、記者会見で泣いた一因ともなった)。
ちなみに、今枝弁護士が裁判において涙を見せるのは、今回が初めてではない。検察官であった時には被害者の立場で涙を見せていたという。
http://tknr.net/mt/archives/200708/15-1017.php
検察を辞めた理由は、体調を崩したのと、父親が60歳前に退職し長男だから広島に帰ろうと思ったのと、18歳の女子高生が飲酒運転の車にはねられ顔を複雑骨折したというせい惨な事件の公判立ち会いで泣いてしまったことから検察官として失格と思ったこと等です。
このコメント欄を先に読んでいたため、私は報道で断片的に映された今枝弁護士に反感を全く持てなかった。
しかし、裁判で涙を見せたことから自分が検察官に向いてないと考え、弁護士に転身したというのに、今回も涙を見せてしまった精神的な弱さは、少しばかり不安をおぼえる*1。今枝弁護士の能力を疑うわけではないが、精神的に向いていない仕事なのではないかと思わずにはいられない。
記者会見自体も、長時間話すほどメディアに編集用の素材を多く提供しているだけになり、むしろ真実を伝えられなくなっている気もしている。
もっとも、そもそも刑事裁判とは金銭的な利益を得られる仕事ではない。国選弁護はもちろん、多くの私撰弁護でも時間や労力を思うと見合わないという。だからこそ弁護団を結成し、一人一人の労力や時間を分散させるという側面すらあるのだ。
現状では、仕事以上の何かを持つ者でないと……つまり今枝弁護士のような人でないと、刑事弁護を引き受けてもらえないという現実があるのだ。近代の法制度においては、弁護人がつかない限り刑事裁判は開けない。
涙を流す弁護士がいなければ、刑事裁判は進行しないという可能性も頭に置いておいていいのではないか。
今枝弁護士が元検察官であることを念頭に置き、id:buyobuyo氏経由*2で下記『痛いニュース』におけるコメントを読むと、あまりのひどさで本当に頭が痛くなってきた。
痛いニュース(ノ∀`) : 【光市母子惨殺】 元少年「生きたい」「検察、僕をなめないでいただきたい」…弁護団、涙で「こんなに胸を張って弁護できたことはない」 - ライブドアブログ
批判したいなら、最低限でも今枝弁護士のブログくらいは軽く目を通しておくべきではないか。報道で得られる情報の不全さが明らかになっている後で、なおも報道された一部情報から即断できる自信がどこからわいているのか。
だいたい画像テロップで「今枝」と出ているのに、誰も気づかず「今村」と書いてしまう鈍さには呆れる。
*1:もちろん、一方で感情を抑えている安田弁護士等は非人間として扱われているわけだが。