法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

自分が使う無敵論法を他人が使っているかのように見せかけるgryphon氏

まず、以前に別件で引用した*1はてなブックマークの下記コメント。
はてなブックマーク - へぼやま on Twitter: "穏当な抗議をしている間は『たいした問題じゃない』『それほど大きな批判はない』と無視をし続け、より大きなアクションで抗議をしたら『こんなやり方では聞き入れられない』という論法。 結局「おまえ等の言い分は全て無視」の卑劣漢の常套句です… https://t.co/0wVc4xJQtY"

同じ主張を、ずっと行動右翼がテロ(彼らは「肉体言語」と自称)や街宣車の正当化論法として使ってた。ああ、在特会もか/あだち康史も「わが意を得たり、ありがとう!」/あ、江川卓も「ドラフト改革は俺のお陰」と

次に、タブロイド学者*2の用いた詭弁を解説したツイートへの、はてなブックマークのコメント。
はてなブックマーク - hhasegawa on Twitter: "ヘイトスピーチの本来の対象を明言せず、もともと差別的な集団だけ反応するよう発信するのは、英語圏で(最近は独語圏でも)いう「犬笛政治(Dog Whistle Policy)」の典型であろう。批判されても、そんな意図ではなかった、そう… https://t.co/MAeRp1B94X"

「お前は笛を吹いて煽動してる。何の音もしてない?犬笛だから音はしないが『奴等』には聞こえてるのだ!」(無敵) /てか「足利尊氏評価は奴のように皇室に背けという『犬笛』だ」みたいな論法がかつて…

もちろんあだち康史氏や江川卓氏がheboya氏に同調したりはしていない。一方、三浦氏の発言には呼応する動きが見られるのに、「何の音もしてない」という文章をすべりこませる。


見るかぎり、id:gryphon氏の手法はシンプルだ。
革新的な主張に対して、文脈や条件を無視して論法を勝手に拡張させて、暴力的であったり差別的であったりする勢力と同一視する。
保守的な主張に対して、もたらす暴力や差別は仮定でしか認めずに現状は無視して、逐語的でない批判はすべて拡大解釈とみなす。
一方の勢力は100点満点でなければ全体を不合格として、もう一方の勢力は1点でも合格で不合格者は例外あつかいする、よくある詐術だ。

社会不安を煽ったことを正当化するために三浦瑠麗氏が“震災で迫撃砲が発見された”という逸話をもちだしていて唖然とした

タブロイド学者の三浦氏*1が、ツイッター警察白書とともに、迫撃砲発見の逸話を引いていた。

すでにリプライで懐疑され、下記エントリのような検証も提示されているように、これは現在のところ中西輝政氏のつたえる「噂話」しか存在しない。
コピペ探訪〜阪神大震災コピペの謎を追え(3) - 小久保せまきのはてな分室

これは2004年2月10日に発行された保守系批評誌「Voice」3月号(PHP出版)の京都大教授中西輝政氏の連載「日本の国防力が目覚めるとき 第15回 国家としての日本を考える(121P〜122P)」が出典である。


さて、中西氏がどれほど信頼をもてる論者か。
たとえば陰謀論的な論文を公表したことで自衛隊幕僚を辞めた田母神俊雄氏を応援して、自身も張作霖暗殺陰謀論を語っていた。
張作霖爆殺事件3
さらに以前には、真珠湾攻撃ルーズベルトが知っていて泳がせているといった陰謀論に賛同して、秦郁彦氏らに批判された。
スティネット「真珠湾の真実」をめぐって 中西輝政−秦郁彦論争を中心に 日米開戦「ルーズベルトの陰謀」
つまり「皆さんが納得するレベル」どころか、保守派ですら切断処理せざるをえない陰謀論者の、あやふやな伝聞証言だった。そしてその内容はというと、まさに社会の不安と分断を煽るものだった。


そもそも「スパイ」がいることまでは信頼できる情報があるとして*2、それが三浦氏のような社会扇動を肯定するものとは限らない。
たとえば2016年の聯合ニュースで、工作員に指示を送るための乱数放送が十数年ぶりに観測されたという報道がそれだ。
スパイに指令? 16年ぶりに「乱数放送」再開=北朝鮮
伝えられている出来事は、三浦氏が「韓国の情報源に基づく英国の記事」と紹介したタブロイド記事と同じだが、分析を読むとニュアンスの違いがはっきりする。

 ユ院長は、乱数放送は大きく三つに分けられるとしながら、「一つ目は実際にスパイに指令を出すもの。二つ目は韓国の情報当局を混乱させるために虚偽の内容を放送するもの。三つ目はスパイの定期訓練のために放送するもの」と説明。その上で、「北が乱数放送を再開したのは、韓国に対する工作活動を再開したというメッセージを韓国当局に送ることで、南北間の緊張を高める狙いがあるとみられる」と指摘した。

 ただ、乱数放送はデジタル時代になった今ではほとんど使われないアナログ方式で、北朝鮮の対韓国心理戦の一環だとする見方もある。

つまり隣人が一斉蜂起する恐怖を煽った三浦氏は、この記事の分析にしたがえば、むしろ敵の術中にはまっていることになる。