法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『バトルスピリッツ 少年激覇ダン』第31話 ダーククリムゾン襲来 逆襲のビャク・ガロウ

不利な状況で針の穴を通すように攻撃をかわすカードバトルが素晴らしい。最終的には敗北したものの、強敵への勝利を信じて策を展開し続ける姿は熱かった。おまけにバトルを長引かせたおかげで敵から逃走できたという展開を見せ、途中の防御に価値があることを別方向から裏づける。
勝敗という結果以外にもカードバトルの面白味があることが、物語から自然に伝わってくる。カードバトルで物事の勝敗は決まるが全てではない、というこの作品独自の価値観が良い効果を上げていた。

『ハートキャッチプリキュア!』第11話 アチョー!!カンフーでパワーアップします!!

演出は岩井隆央。
これまで日常場面では実写のように引いたレイアウトを多用してきた演出家なのだが、今シリーズはロングショットが多用されているため、逆に一般的なアニメと近い感触がある。移動中の主人公をふきだし内で処理したり、少女マンガチックな演出もあった。
アクションも今シリーズが全体的にメリハリあるため、段取りをていねいにおった殺陣が、もたついているように感じてしまった。もちろん、カンフーという現実に存在する格闘技を取り入れたためという要素もあるし、神社の境内という舞台を活かして石灯籠ごしにキャラクターを配置するような面白い構図もあったのだが……


脚本は伊藤睦美。
いかにもカンフー映画にはまって日常でもマスターを気取ってしまう兄の嘘が、なかなか痛々しくもむずがゆい。格好だけということが同級生の男子や女子にもばれてしまい、ついには「弟子」の前でみじめな敗北をきっする場面なんて、良い意味で直視しにくい映像だった。
もちろん最終的に少年は嘘を真へ変えてみせるわけだが、そこは教科書的で意外性はなく、駄目ではないが感心もしなかったな。
変身する人々を目の当たりにして協力までしてしまい、プリキュア達の作中における位置づけがわかりにくくなったという問題もある。結末で弟を前にして、プリキュアという存在をどのように受け止めたか説明する余地はあったと思うのだが。たとえば映画の撮影か何かと勘違いしたという内容でもいいし、白昼夢を見たと思い込んでもいい。今後にフォローがあるかもしれないが。


ところで、クモジャキーのマッチョぶりは、はてなダイアリーを書いていたら100usersくらいブックマークがつくレベルだな、とか見ていて思う。こう思ったこと自体は内輪受けネタだが、悪役の主張が現実にも存在しそうな誤謬というところは、注目すべき要素ではないだろうか。
もちろん主人公にきちんと反論させているのもいい。今回も単純な精神論をぶつけ返すのではなく、人の普遍的な弱さを認めるべきという反論というところが素晴らしかった。
 

『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』第53話 復讐の炎

大原実がコンテを担当。原画には亀田祥倫、他。
原作でも印象的なエピソードなのだが、Aパートは棒立ちで会話説明をくりひろげたり、エンヴィーの巨大化で作画等を使いまわしていたり、作業の省力も目立った。
しかし真犯人との対峙から、終盤に向けて相乗的に高まっていく声優と作画の演技は素晴らしく、人外を前に人を踏み外していきそうな大佐の緊張感がよく表現されていた。結果として、よくある銃突きつけで次回へ引いてしまった構成が原作既読者として残念だったくらい。濃密な内容なのだから、視聴者の興味を次回へ引くため簡単な謎を提示する必要はないだろう。たとえば終盤まで緊張感が高まり続け、ホークアイと合流して緊張感がゆるんでしまった瞬間にEDとなっても良かったと思う。

『アイ・アム・レジェンド』

TVで視聴。思わず邦題を『ウィル・スミスのアイ・アム・レジェンド』とつけたくなったほど、いつも通りのウィル・スミス。
最初から科学者じゃなく、人類が絶滅の危機におちいった後から生き残りの一人として研究を行っていた、というような設定であれば、まだしも自然だったと思う。もちろん、ウィル・スミスのような科学者が存在しないなどという考えも職業に対する偏見だが、劇中実験描写の不自然さも薄れると思う。
それでも、本来に予定されていた原作通りのラストであれば、典型的なアメリカンたるウィル・スミスが主演である必然性が強く出たと思うのだが……ウィル・スミスがダークシーカーへかけた罠をダークシーカーがかけ返す描写とか、原作の結末を知っている者としては良い伏線だと思ったし、最後にウィル・スミスが襲われる場面で何かに気づく様子も、そのまま「衝撃の結末」へなだれこむかと期待してしまったよ。価値観の逆転を描かないのでは、怪物化した人々から襲われる最後の一人という、よくある娯楽映画と変わりない。


ハッピーエンドに近く変更するとしても、せめてダークシーカーとの共存を目指すレジェンドを打ち立てれば良かったのではないか。
藤子・F・不二雄『流血鬼』を実写ドラマ化しないものだろうかな。舞台もせまいし、特撮もちょっとした流血描写がある程度だから、かなり安価に実写化できるはず。