2017年に2クール放送されたTVアニメ3期。たしか当時にABEMAなどで完全無料配信もされていたが、購入していた映像ソフトで視聴した。
ロシアの学園都市への侵攻から第三次世界大戦がはじまる展開に、それぞれの立場でいがみながらも抵抗する英仏は存在感があるのに、なぜか米国の描写がほとんどない。
原作の読者や放送当時の視聴者はどう思ったのか知らないが、トランプ政権がふたたび始まった2024年以降の現在では奇妙な生々しさが出ている。
しかし主人公の上条当麻が複数の外国までわたりあるいて舞台のスケールこそ大きくなっているが、あらゆる超常を消去する右腕で主人公がパンチして決着という『水戸黄門』の印籠のごときマンネリズムのため、主人公まわりのドラマはまったくスケールの拡張を感じさせない。主人公の言動だけでなく、敵と対峙した時の展開まで変わらないため、スケールが固定された主人公にあわせて世界のサイズが縮んでくる感すらあった。
どちらかといえば、上条もふくむ独立した事実上の主人公3人のドラマを交互に進行する部分でスケールの広さを感じさせる。特に、もはや明らかに名目だけの無能力主人公でしかない上条と違って、本当に設定から無能力な浜面仕上という青年の旅路は地に足のついたもので、超能力と魔術にあふれた物語のなかで見ごたえを生んでいた。もっとも浜面にしても、一時期はリーダーであった麦野との戦いが3回あって、どれも同じようなパターンになったところは工夫がほしかったが。
マンネリズムは第三の主人公たる一方通行に変わっても完全には緩和されない。どの主人公のエピソードも、新登場のキャラクターについて記号的な説明をしてすぐ毎回バトルに突入するため、最終的な勝敗がわかりきった勝負を短期間で何度も見せられても単調に感じられて飽きが来る。異能バトルだけ楽しみたい視聴者には良いのかもしれないが、キャラクターの信念も後悔もバトルのなかで描かれるため、時間に制限がある劇場版ならともかくTVアニメの構成としては無理がある。
念のため、まったく楽しめなかったわけでもない。各話ではアクションの舞台を旅客機にしぼった第10話が佳作。かつてよく揶揄された序盤の「熱膨張」を出発前の日常の一幕でギャグにしたかと思えば、本筋の伏線になったりする。ハリウッド映画に出てくるようなシチュエーションをつかいつつ、それよりリアリティのある展開を30分に凝縮して楽しかった。
映像作品としては、主に前半で3DCGを多用して背景世界を構築しているところが目を引く。OPともども学園都市という舞台そのものがストーリーの主軸になっている作品らしさがある。わりと直線的で無機質なモデリングだが、ディストピア性をむきだしにした今作の雰囲気にはあっている。これは錦織博監督が劇場版の制作で採用した手法でもあるが、当時のインタビューによるとはアニメーターのレイアウト能力の不足を補うためだったという。異なる舞台を移動することによる情景の変化も単調さを防いでいて、雪原ばかりのロシアはともかく、英国の市街地なども見ごたえはあった。
キャラクター作画も、すくなくとも映像ソフト版は安定。当時から現在までの作画への不評意見を見てまわったが、少なくとも1期や2期と比べれば向上はしている。ただ1期2期の放送時は水準にとどいていたのに、3期になってTVアニメ全体のクオリティが向上するなかでは置いていかれている感はある。またアクションが多いわりにエフェクト作画のスタイルが古くて、一部を除いて面白味が足りない。
