法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『キン肉マン 大暴れ!正義超人』

 盛大なパレードをおこなうキン肉マンに対して、ホルモン族の女ビビンバが攻撃をしかける。キン肉族に王位をうばわれた恨みからだという。ビビンバの暗殺をしりぞけたキン肉マンは、その美しい顔を見てひとめぼれ。
 それはそれとして地球に帰ったキン肉マンは、テレビでとりあげられる超人たちのひとりとして自分の出番を待っていた。一方でホルモン族にくみする男シシカバ・ブーは、キン肉マンと戦いビビンバと結ばれようと考えていた……


 1作目*1と同じく1984年に公開されたアニメ映画。1作目が夏休みの東映まんがまつり作品だったことに対して、こちらは冬休み向けの東映まんがまつりで上映された。

 まるでアニメオリジナルヒロインのように原作ヒロインのビビンバが登場し、キン肉マンと敵味方を超えた恋愛劇を演じる。そしてTVアニメからつづくアニメオリジナルヒロインのマリは結末に登場してヒロインの座にもどり、ビビンバは退場する。
 アニメオリジナルと原作オリジンのキャラクターの立ち位置と交代が珍しく、その意味では個性的な作品になっている。この映画を見て、原作の特にビビンバのファンはどのような感情をもっただろうか。


 しかしアニメに原作要素を組みこむには1時間に満たない尺が短すぎるし、入れている要素が他にも多すぎる。
 原作と同じくビビンバをめぐって争うシシカバ・ブーを出すまでは良い。しかし、ホルモン族に協力するブラック・エンペラーなる敵とその配下の組織まで大挙して登場し、超人とバラバラにプロレスで戦う展開になるとビビンバがドラマの蚊帳の外になってしまう。かといってプロレスシーンも尺が少ないので、敵に圧倒されかけたところを必殺技で倒す展開が連続するばかりで工夫がなく単調。さらに人気キャラクターのバッファローマンが登場して悪魔超人から正義超人への鞍替えまで描かれ、完全にストーリーの重心が行方不明。
 他の超人たちの顔見世は劇中テレビ番組の紹介ですませて、アニメオリジナルの敵組織も出さず、キン肉マンとビビンバとシシカバ・ブーの因縁の戦いにしぼって映像に力をいれたほうが完成度が高くなったのではないだろうか。
 1作目と比べて映像もあまり良くない。パルプマガジンに登場するようなビキニアーマー姿のビビンバだが、中途半端な劇画タッチで他のキャラクターから浮いている。ギャグもつまらない貧乏ネタばかりで、敵組織もギャグで冷や汗をかく姿を先に見せているので、世界全土が危機におちいったはずの展開も緊迫感がまるでない。