法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『呪怨 白い老女』

 とある一軒家に配達にきた青年。何度たずねても住人は別の用事があるらしく、荷物をうけとろうとしない。しかし青年が違和感をおぼえて家に入ろうとすると恐怖に直面する……


 シリーズをつくりあげた清水崇が初めて監修にまわり、別監督によって2009年につくられた外伝Vシネマ2作品のひとつ。外伝でもこちらは恐怖描写は悪くないと聞いていた。

 監督をつとめるのはショートホラーオムニバスシリーズ『怪談新耳袋』の劇場版で「姿見」が高評価された三宅隆太。

 内容も5分間の「姿見」を1時間にひきのばしたセルフリメイクといったところ。


 合成やCGを目立ったかたちではつかわず、特殊メイクやトリック撮影を活用したアナログな絵作りがシリーズでは珍しい。しかしVシネマとしても全体的にクローズアップが多く、映像はTVドラマレベル。フェイクドキュメンタリーでもないのに、全体的にカメラ位置が人間の視点と同じくらいなところも首をかしげる
 恐怖描写は出来不出来がはげしい。序盤の「ちょっと手がはなせない」は奇妙な味わいの恐ろしさがあったし、他にも悪くないホラー描写は何度か見られるが、予想外の驚きまではない。「姿見」から引いた描写として謎めいた姿見は悪くないが、原典でインパクト絶大だった「白い老女」は多用しすぎて飽きてしまう。他も小刻みに時系列を分割したオムニバスのわりに、観客に心の準備をさせてしまっている。カメオ出演のような俊雄は本筋にからまず、良くも悪くもシュールな描写。
 人間による殺戮が想像力を刺激するホラー映画らしくなく、流血を見せつけるような安っぽいスプラッター映画の肌ざわりで撮られているので、呪いの恐怖と齟齬を感じたのも難。シリーズで初めてR15あつかいにするほど必然性のある描写とは思えない。とにかく見ている人間を怖がらせようとサービスたっぷりなこと自体は好感をもてたが……