旅客機のなかで異変が起こり、謎の墜落事故が起きる。それは呪いのビデオによるものだった。青年ホルトを呪いから救おうとした恋人ジュリアは呪いのビデオを自発的に視聴して、呪いの根源を調べる旅に出る……
『ザ・リング』シリーズの3作目にあたる2017年の米国映画。鈴木光司の原作小説と映画版の両方が原作としてクレジットされている。
ハリウッド版では最も原作に忠実と原作者がコメントをよせているが、映画版も原作あつかいされているように小説そのものの再映画化ではなく、かつて呪いのビデオが蔓延したことがある世界の後日談的なつくり。
ジャンク品のビデオデッキ内のビデオテープから呪いが再拡散したり、研究者が呪いのビデオに興味をもって拡散に手を貸してしまうあたり、ホラーアイコンの対決企画ながらまっとうにリメイクした映画『貞子VS伽椰子』の貞子パートに近い構造をしている。
そこから始まる物語は、しいてジャンルを呼ぶならオカルトモンスターホラーか。プロローグの舞台として固定モニターが多数ある閉鎖空間として旅客機が選ばれ、有名なモニターから出てくる描写を早々に展開する。モニターから出てくることを防ぐ方法もいくつか試されたりと、良くも悪くも観客が過去のヒット作を知っていることを前提にした描写が多い。
サマラの登場や鳥の群れなどVFXはパラマウント配給とは思えない低予算低技術だ。画面が暗すぎるところが多くて、視聴する時は部屋の照明を消したほうがいいだろう。
一方で独自性のある良い描写もいくつかあり、特に雨がしたたる描写を多用して、見通しの悪い湿度の高い陰鬱な画面をつくったところは良かった。呪いの根源がある地域のさまざまな恐怖描写は原作にも過去の映画にもない雰囲気にあふれていて、スタッフの個性を感じさせる。
しかしどこが原作小説に最も近いのかと首をかしげていたら、呪いの根源をつくりだした原因が通じる。映画版では珍しく、呪いの発生に間接的だが原作小説と同じ行為をもってきている。たしか他のメディアミックスでこれをやったのは、初映像化の2時間ドラマ版と、小説のコミカライズくらいか。
そして真相判明から始まるクライマックスは、これまでのシリーズとはジャンルからして全く異なるホラーになっている。米国のホラー映画で定番の展開で、良くも悪くも怖さの性質がまったく異なる。そのため呪いが救いになる逆転は面白かったし、変化球と思えば悪くない。
シリーズ作品としては同時代の日本作品に比べれば予算をかけて真面目になってるし、単独作品として見れば平凡な米国の低予算ホラー。吹替えすらないB級ホラーと思って期待しすぎずに見るのが一番いいかもしれない。