刑期をつとめて出所した落語家、橘亭青楽が落語会に特命係をまねいた。寄席らしくない雰囲気の場所にとまどいつつ楽しみにしていた特命係だが、体調不良で落語会が中止になったと聞かされ驚く。しかも実際の橘亭青楽は行方不明になっていた。
そして殺人事件が発生。どうやら橘亭青楽がボランティアで落語を教えていた受刑者の因縁がからんでいるらしい。被害者も受刑者のひとりで、落語を真面目に学んでいた他の受刑者によくからんでいた……
竹内清人脚本で、season1第3話*1に登場した落語家が22年ぶりに再登場。残念ながらまったく記憶に残っていない。再放送とあわせてほとんど全話を視聴しているが、season1あたりは再放送の回数が少なくて見逃しが多いし、時間がたちすぎて見逃したかどうかもおぼえていない。
一応、落語家の必要最低限の説明はあったし、罪をつぐなった人間が奇妙な事件に巻きこまれたという構図なので、今回を見るだけでも物語を追うことに支障はなかったが。
物語の本筋は良くも悪くも作品の標準といったところ。子供を死なせてしまった受刑者の回想にじっくり尺をとって、似た若者の罪を背負ってしまう愚かさをウェットにもりあげていたが、実のところ凶悪犯に騙されただけなのでドライにつきはなして描いたほうが良かった気がする。もっと杉下が厳しすぎる指弾をすれば、むしろ視聴者は愚かな受刑者に同情しやすい。
逆に、落語家が姿を消した経緯と真犯人の正体はけっこうトリッキーなのに、あっさり流してしまったところが惜しい。前者は不可能犯罪のようにもりあげることすら可能そうだし、後者はもっと伏線を強調すれば意外性だけでなく納得感も味わえただろう。たぶん解決編がはじまって杉下が最初に指摘するのが後出しの手がかりという順序が良くない。ここはなぜ橘亭青楽が寄席らしくない場所で落語をすることになったのかという発端から謎を解いたほうが説得力が出たと思うし、今回の物語の枠組みそのものが事件と密接にかかわっていたという驚きが増しただろう。