法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 season22』第14話 亀裂

 杉下右京とチェス勝負を楽しんだ男は、さまざまな若いクリエイターのパトロンとして活躍する美術収集家だった。しかし杉下と勝負している最中に邸宅で若者の死体が発見され、ほぼすべての美術品が消えていたことがわかった。
 一課は最近に連続している美術品強盗事件と考えて足跡から特定していく。一方、杉下と亀山は邸宅の鍵が無理に開けられていないことや、美術収集家が最初にパトロンとなった画家が筆を折っていることに注目する……


 岩下悠子脚本で、美術をつくる者と集める者の不思議な関係を描く。
 劇中の美術品も物語をささえられるくらい説得力があり、日本の刑事ドラマとしては予算不足も感じられず、よくできた単発回だったと思う。


 まず、人当たりが良いようで過ちを犯したクリエイターにも真摯に向きあいながら、どこか冷酷さを感じさせる収集家のキャラクターが良い。
 そこから美術収集家の余命がのこりわずかと語られた時点で、収集品を自分とともに葬ろうとしたことが事件の背景にあることは視聴者として見当がついた。日本の富豪が自身の棺にゴッホの絵を入れて火葬してほしいと語った問題を知っていたので、すぐに気づけた*1。しかしそこからどのように事件につながるのかは手がかりが少ない。
 新たな手がかりとして、裏バイトに美術品の強盗を依頼するための写真を一課が特命係にもちこむわけだが、依頼者の姿が反射して映っていることに一課が気づかないのはマヌケすぎる。ダークウェブで見つけた写真にそれが映っていることには気づいて、誰か知らないかと特命係にさぐりに来る描写にするべきだったと思う。
 しかしその手がかりがあからさまな写真に別の手がかりも映りこんでいるという展開は良かったし、そこからあばかれた収集家のとてつもないスケールの狂気にも圧倒された。


 そして収集家に対して手ばなすことの大切さをうったえる杉下が、歴代相棒とのドラマを思い出させたのも良かった。単発回でありながらシリーズの連続性を感じさせる。スタッフの意図したことかはわからないが。