法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『劇場版 バリバリ伝説』

 バイクで峠をつっきる公道レースをおこなっていた巨摩郡の前に、冷静なレース運びをする聖秀吉というライバルがあらわれる。ふたりの少年の危険な野良レースは、やがて鈴鹿を舞台とした公式レースに舞台を移していく……


 1986年に発売された中編OVA「筑波編」「鈴鹿編」全2巻を編集して1987年に公開されたバイクレースアニメ。OVAもふくめて一度もDVD化されていなかったが、ついに2023年7月にBlu-rayが発売予定。

 しげの秀一の原作は未読だが、メカニック作画が当時としてはハイレベルでリアルなことと比べて、キャラクター作画の頭身が低くて漫画チックなのが不思議だった。特にヒロインが少女漫画から飛び出たようなキラキラぶりで世界観から浮いている。それでいて違法な公道レースをバイクでおこなう世界観らしく、身勝手な理由でサブヒロインへレイプがおこなわれようとして、その実行犯に対する主人公の鷹揚な態度はちょっと信じられない。そのレイプ問題は前半終わりの一幕でしかなく、後半のバイクレースにかけるスポーツマン的なドラマと温度差がありすぎる。これは無軌道な少年たちと競技にかける少年たち、そのふたつの物語にわかれていたOVAを単純にくっつけた弊害が出たのだろう。
 しかしバイクを動かすアニメとしては魅力的ではあった。まだまだデジタル技術が一般的ではなく、背景を動かす技術などない時代、手描き作画でキャラクター以外の地面や風景まで動かす精緻な背景動画を見せてくれる。その動きも単純な直線ではなく、うねった峠道にあわせた主観的なカメラワークが楽しめる。さすがに映像を使いまわす省力はしているし、音響関係は時代性の弱さを感じたものの、手描き時代のレースアニメとしての見どころは充実していた。