法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『AIKa ZERO』

世界各地が水没した近未来。19歳になった皇藍華に、旧友から不思議な依頼がくる。とある女子高に怪しげな動きがあるのだという。さっそく潜入調査をする皇に、少女たちの魔の手がせまる……


2009年に全3巻で発売されたOVA。今はなき制作会社スタジオファンタジアのオリジナルシリーズから、成人主人公の1作目と、その学生時代を描いた2作目の中間にあたる出来事が描かれた。

シリーズ1作目からキャラクターデザインを担当した山内則康が、今回は初監督も同時につとめた。現時点で唯一の監督作品でもある。


大人びた色気を劇画などではなくアニメのファン層に受けるキャラクターデザインで珍しく成立させたのが、シリーズ1作目の『Aika』だった。こぎみよい娯楽作品として評価も高かった。

しかし山内則康の絵柄が、以降は『ナジカ電撃作戦』、『ストラトス・フォー』、シリーズ前日譚の『AIKa R-16:VIRGIN MISSION』とキャラクター設定もあって幼く簡素化が進み、独自性と魅力がうすれていった。

しかし今作でようやく第1作との中間くらいに頭身をあげ、瞳も小さく、ぐっと大人びたキャラデにもどした。やはりB級アクションで健康的な堂々とした色気を見せるなら、今回の19歳以上の年齢にひきあげるべきだと感じた。
前2作が海を舞台にしたことから、変化をつけるため女学園を舞台に。前作『R-16』でもライトな百合らしさがあったが、今回はさらに耽美な百合色が強い。触手が生えた少女が学園を性的に支配する展開に某小説を思い出したり*1
全編メカ描写が手描き作画というのも発売時期からすると珍しい。ブラシを活用したグラデーションのついた質感もいいし、メカそのものの重量感もよく表現されている。『R-16』の3DCGメカ描写が情報量がなくて薄っぺらかったことの反省だろうか。
ブックレットのPDと監督の対談によると、スタジオファンタジア初のBlu-ray媒体ということで、混乱があったという。しかしそれに応えられるだけの絵作りが全編できていて、今のところシリーズ最終作にしてファンタジア元請け最終作だが、有終の美を飾れたのではないだろうか。

*1:ネタバレになるので、Amazonへのリンクで紹介しておく。