法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

この日記を読みかえして、思っていたより十数年間でプーチン観が変化していたことに気づく

 京都大学でゼレンスキー氏のコスプレをして世界にも報じられた「あみき(総人の恥部)@LohoG29i」氏が、かつてウラジーミル・プーチン氏がインターネットでは「名物リーダー」だったとふりかえっていた。


インターネット初老として言っとくと、プーチンも昔は「おそロシアの名物大統領」だったんだよ…
熊を乗りこなし、無加圧で深水に潜り、例えトイレに隠れていても息の根を止めに行き、安倍と仲良し外交をし、グレタを一蹴し、トップレス女性活動家にウヒョ顔をしたかつての名物リーダー…さようなら。

 もちろん「はなびら葵@hollyhockpetal」氏に指摘されているように、その「名物リーダー」だった時点で現在と大差はなかったし、そのことは「あみき(総人の恥部)@LohoG29i」氏も認めている。


これは自省もこめて言うんだけど、インターネット老人会が本当に向き合わなきゃならないのは、プーチンは豹変したのではなく、そうやって「おそロシアの名物大統領」として面白アイコンキャラ扱いしていた当時からすでに国内外で暗殺、戦争、虐殺を主導していた指導者だった現実だと思う…。


かつての日本のインターネットでは概ねそういうもてはやし方、面白がり方だった、という客観的事実を述べているまでで、
私個人がプーチンネタ化に加担したわけでも、対内的な闇やチェチェン紛争やシリア内戦を知らなかったわけでもないです。
でも、確かに自分はそれを止めようとしなかった。
反省。

 はてなブックマークでは「はなびら葵@hollyhockpetal」氏よりのコメントが多いようだが、id:frothmouth氏のように過去のプーチン氏と現在のゼレンスキーを同等視したり、セルフイメージに合わせたネタと反したネタを同等視するコメントもある。
[B! ニコニコ] あみき(総人の恥部) on Twitter: "インターネット初老として言っとくと、プーチンも昔は「おそロシアの名物大統領」だったんだよ… 熊を乗りこなし、無加圧で深水に潜り、例えトイレに隠れていても息の根を止めに行き、安倍と仲良し外交をし、グレタを一蹴し、トップレス女性活動家… https://t.co/4pEoo48d0V"

frothmouth それで良いんじゃないの、歴史の大先生気取りは放置で良い ”何十年というスパンで見てゼレンスキー大統領が最終的にどういう歴史的評価を受けるかはわからない。 そのときは、そのとき。 道を外せば当然批判する”

[B! 怖い] はなびら葵 on Twitter: "これは自省もこめて言うんだけど、インターネット老人会が本当に向き合わなきゃならないのは、プーチンは豹変したのではなく、そうやって「おそロシアの名物大統領」として面白アイコンキャラ扱いしていた当時からすでに国内外で暗殺、戦争、虐殺を… https://t.co/3dutLniDN1"

frothmouth 習近平のプーさんコラを「茶化して受け入れようとしている」と考える人もいるってことか/自分がバカだったと反省するのは良いけど、茶化すヤツはみんなプーチンの恐ろしさを理解していない、ってのは間違い

 まず気候変動について学者の声を聞くように訴える意見を「一蹴」したことや、表現弾圧に対するフェミニスト団体からの抗議をかさねて抑圧したことは、きちんと考えれば当時から批判できただろう。
「トップレス抗議取り締まるように」、ロシアがドイツに要請 | ロイター

女性の権利団体「Femen」のメンバー3人が、同大統領に対し「独裁者」などと叫びながら、トップレスで抗議した。同団体は、反プーチン政権の曲を演奏した女性バンド「プッシー・ライオット」のメンバーに実刑判決が下ったことに対し、欧州で抗議活動を行っている。

クレムリン(大統領府)の報道官は、この抗議活動について「これはよくあるフーリガン行為であり、残念ながら世界中のどの都市でも起きることだ。(彼らを)取り締まる必要がある」と述べた。

 また、強権をふるうこともためらわない政治家というイメージは、少なからずプーチン側の情報発信にそったものだった。日本のサブカルチャーでも戯画化された英雄のモデルにもされた。

 一方、習近平氏の「ネタ」は、問題を矮小化して見くびらせる危険もあるものの、セルフイメージに反した揶揄ではある。
 逆に日本で志位和夫氏を「ムーミン」と呼ぶ「ネタ」は、習近平氏を「プーさん」あつかいする「ネタ」と形式的に近いが、親しみやすさをアピールしたいだろう日本共産党には歓迎できる側面もあるだろう。
『ムダヅモ無き改革』でキャラクター化された麻生太郎氏と鳩山由紀夫氏が「ネタ」だから揶揄として同等と考える読者がどれだけいるだろうか。


 しかし日記を読みかえしてみて、印象とは異なる部分でプーチン氏への評価が変化しているのではないか、という可能性に気づいた。
 それぞれ2008年と2016年、同じ『NHKスペシャル』で国家にコントロールされるメディアを映しとり、どちらもすぐれたドキュメンタリだったのだが、感想の末尾でちいさいが重要な変化があった。
『NHKスペシャル』言論を支配せよ〜“プーチン帝国”とメディア〜 - 法華狼の日記

NHKスペシャル」のタイトルがノイズのように消える冒頭から、この『NHKスペシャル』自体がTV番組であることを強く意識させる。そう、NHKにとっても政治の介入は他人事ではない

『NHKスペシャル』そしてテレビは“戦争”を煽った 〜ロシアvsウクライナ 2年の記録〜 - 法華狼の日記

どこか日本の現状にひきつける部分もほしかったが、とりあえずは視聴者が補えばいいだろう。
小さなジャーナリズムの存在を知り、それを支えるのは我々の責任でもあるはずなのだから。

 たしかにプーチン氏は変わらなかった。その報道への介入を日本の公共放送は危険視できていたし、力をいれたドキュメンタリを放映することもできた。
 しかし報道へ国家が介入することが自国でもありうる問題だという表現が、後年の放送では欠けていたようだ。
 その期間に何があったかというと、NHK自身が第二次安倍政権下で政治介入されつづけていた。現場の抵抗や外部の批判はあったが、介入を止めるにはいたらなかった。
籾井勝人NHK新会長が就任記者会見で、日本軍慰安所制度の固有性を無根拠に否認したとのこと - 法華狼の日記
百田尚樹NHK経営委員の問題について、報道がほとんどなかっただけで判断を誤り、それを批判されたらアナクロニズムと言い返した大学教授 - 法華狼の日記
 2016年の『NHKスペシャル』からは、2008年の『NHKスペシャル』で政治介入に抵抗しながら屈して政府広報化したメディアが連想される。
 そして、過去の日本ではプーチン氏の問題が知られていなかったわけではなく、むしろ全国地上波で批判報道がされていたのに忘れられていたという方向で考えるべきではないだろうか。