法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『アンドロメダ…』

米国の片田舎に人工衛星が落着し、小さな村が動きを止めた。当局が防護服を着こんで調査しに行くと、生き残っていたのは赤ん坊と老人のふたりだけ。米国は生存者を施設の地下深くに隔離し、大量死の真相を調べようとするが……


マイケル・クライトンの医療SF『アンドロメダ病原体』を原作とする、1971年の米国映画。人工衛星に付着していた謎の病原菌に抵抗する医療者たちを描く。

現在から見ても違和感のない施設の全体像や、タイポグラフィを活用したオープニング、画面分割を多用した時間経過など、ドライに進む医療サスペンスとして楽しめた。無機的で淡々とした語り口だからこそ、人体を切ると粉が出てくる特殊造形や、元気をなくしていく実験動物などのわずかな描写が対比的にインパクトを生む。
すべてを無に帰そうとする上層部の思惑でタイムリミットサスペンスが発生する作劇もあざといが悪くない。描写の大半は施設の多重防護をフェティッシュに見せたり、会話劇ですまされているが、遅々としながらも状況が進んでいると感じられるので興味が持続する。


しかし、対処法が見つかりそうで見つからないサスペンスの要点が、ポケモンショック以前は意味不明だったのではないだろうか。完全に対処法が定着した現在の日本で視聴しても、光の点滅で意識が飛んだ描写が物語の都合にしか見えない。その知識がない状態で視聴すると、ただの女性科学者の見落としにしか感じられないような気がする。
あと、原作は未読なので映画スタッフの問題かもしれないが、科学技術の粋をこらした巨大施設の異変で人間が右往左往する、というプロットの枠組み自体はどれも同じだなマイケル・クライトン、と思ってしまった……その科学技術の種類を変えることで導入からジャンルの印象まで違って見えてはいるが……