法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『世界まる見え!テレビ特捜部』なんでそうなるの?驚きの結末SP

2時間SP。ミニ映像コーナーは意外なオチを集めているが、ドキュメンタリーはそれほど意外さがない。良くも悪くも順当に、なるべくしてなった結末へ人々が向かう姿が描かれた。


衛生カメラがさまざまな巨大物を地上に発見した特集。
チリのアタカマ砂漠という場所にある巨大な地上絵。ナスカの地上絵よりずっと小さいが、直角的で無機的な絵柄は個性的。ただ地上絵を紹介するだけでなく、巨人の頭部から四方にのびる髪の毛が天文的なカレンダーになっていると推測される。そのカレンダーを必要とした水田文化や、ヒ素残留によりその土地を去った歴史もあわせて、一遺跡を切り口に文化の全体像を感じさせる。
2006年、イスラエルがシリアで発見した四角い建物。衛星で確認できるくらいの水をひきこんでいることから原子炉と推測され、核開発が疑われた。そこで2007年にミサイル攻撃して破壊、その情報は2018年に公開された。番組の紹介範囲では当然のことをやったかのような淡々とした描写だが、好き勝手やってると思わざるをえなかった……
www.afpbb.com
米国ワシントン州の湖で、灰色の巨大なものが動いている。半世紀近く前から存在しているが、正体は火山による地滑りで湖があふれ、樹木が根こそぎ浮かんで流されたため。いつまでも腐敗せず浮かびつづけている理由を知りたかった。たぶん火山灰におおわれているためだと思うのだが……


さまざまな航空機のトラブルも。エンジントラブルから片肺でオーストラリアに引き返す航空機など。
2011年11月、米国ニュージャージー州からポーランド行きの旅客機が、車輪が出なくなってしまった。特に何か意外な展開があるわけではないが、緊迫感の描写と、滑走路をスムーズに滑る見事な胴体着陸の映像は印象的だった。


フィリピンの市場で親とはぐれた少年が、オーストラリアにひきとられて養子となり、大人になって実の親と再会しようとするドキュメンタリー。
証言をえて抱きあった女性は、DNA鑑定によると生みの親ではなかった。最終的に現地のTV報道の力を借りて見つけ出し、DNA鑑定で確定。
生みの母も育ての母もすばらしい人格だったりと全体として気持ちいいドキュメンタリーだったが、途中で抱きあった女性のフォローはどうなったのか。スタジオでツッコミが入ったように、鑑定してから再会するべきではなかったか。


イギリスでは、もともと障害のあった聴覚につづいて視覚をうしないつつ女性に対して、人工内耳で聴覚だけでも与えようとする医療の挑戦を描く。
直接的に脳神経を刺激することで生み出された聴覚は、世界が広がる体験ではなく、不快な雑音でしかなかった。しかし何度もスイッチを入れなおし、調節して慣れていくことでついに聴覚をとりもどし、過去の友人たちを集めて声をたしかめる……
新技術を導入して成功という単純さではなく、リハビリのような苦労を描写することから逃げない紹介は良かった。もちろんそのような苦労が実際には存在しないことが一番良いのだが。


イラクで爆弾処理をおこないつづける男、ファーケル・ベルワリ。NHKの「BS世界のドキュメンタリー」で2019年に放映された短縮版の、さらにその短縮版のようだ。
www6.nhk.or.jp
イラクに設置された爆弾の解体という『ハート・ロッカー』を思い出させる題材だが、異分子の米兵ではなく現地人の活動なので文脈はまったく異なる。
hokke-ookami.hatenablog.com
ただ、この番組では情報を短縮しすぎて、ファーケルがクルド人であることなどの説明が足りない。途中に市民を相手に演説した場面と、その演説時に爆発が起きたがすぐ任務に復帰した場面で「同じイラク人」という自認が語られるだけ。サスペンスフルな現場を手持ちカメラで生々しく撮影する映像を重視し、対比的な生活感などは描写されない。
全長版を見れば印象が変わりそうだが、どうやらアジアンドキュメンタリーでしか配信をおこなっていないようだ。
asiandocs.co.jp


米国で1980年代、麻薬捜査に熱心だった保安官が自宅で射殺され、三十年後に真実がわかったという『迷宮ファイル』の一編。
2012年の再捜査で現場の見取り図を3DCG化して散弾銃の発射位置を特定。さらに複数の散弾銃で窓ガラスを撃って同じ割れ方をする状況と銃の種類を特定。
そうして警察関係者としぼりこんで、被害者が射殺される少し前にクビにした若い捜査官が犯人とわかった。捜査官は麻薬捜査に熱心なあまり容疑者を拉致して銃をつきつけたという、バディ捜査物で見るような暴走をしていたという。
スタジオではなぜクビにした捜査官を疑わなかったのかと指摘されたし、私は麻薬捜査という伏線だけで若い捜査官の存在を解決編で出されても伏線不足と感じたが……ひょっとしたら、全長版ならばちゃんと過去の捜査でも若い捜査官の存在が言及されているかもしれない。いずれにせよ情報の配置が良くなくて説得力が減じてしまい、意外性よりも唐突感が強くなってしまったという編集の問題だ。