「危険なお仕事 ジャマイカ編」は、カリブ海に浮かぶ島国で低賃金にあえぎながらも、たくましく生きている男たちを紹介。
この種のドキュメンタリは、カメラが入っていることもあって厳しい仕事をしていても陽気な人々が多いが、なかでも今回はやたら明るい*1。
外務省によると人口当たりの殺人率が世界ワースト1~3位を行き来しているらしく*2、ドキュメンタリに映らない範囲では大問題が多々あるだろうに、気候のためか全体的に画面が明るくて雰囲気まで温暖に見えてしまう。
少数の栽培が合法化されているとはいえ広すぎるマリファナ畑や、廃棄物置場からさまざまな素材をとりだして器具を鋳造したりと、白昼堂々と犯罪スレスレの光景が広がることにクラクラする。
そのなかでは、日本で人気としてブルーマウンテンを手摘みする収穫風景が見られたことが興味深かった。末端価格にはつりあわない値段で、フェアトレードという単語が頭をよぎったものの、さすがに現地でもそこそこの高収入らしい。
「鳩レース」は、飼育した鳩の帰巣本能をどれだけ発揮させられるか、エジプト伝統の競技に人生をかける男たちを紹介。
一方が鳩の群れを飛ばして、もう一方が追いかけるように群れを飛ばし、追われる群れの鳩を追う群れに巻きこんで違う巣につれてかえる。交互に飛ばしあって、鳩が多くきちんと帰った数で勝負。取材されていた男は鳩レースをやめて結婚するよう親にせまられているが、鳩レースを優先して拒否している。
無敗の男同士が戦い、取材されていた男が負ける。しかし取材されていた男の群れにまぎれこんでいた鳩には、区別するためたがいに押すスタンプが欠落していた。もちろん抗議するが、スタンプのない鳩が敵の鳩という証拠はない。
そんな不完全燃焼で終わった試合の後日、取材されていた男は結婚していた。不正をふせげないようなレースに人生をかけていたのがバカバカしくなったのかもしれない、と見ていて思った。
「木を愛しすぎた男性」は、米国カリフォルニア州でスタジアムの広大な駐車場にぽつんと立っている木をめぐる、ひとりの男の不思議な活動を紹介。
2005年、駐車場にたつ一本のプラタナスに目を止めたジョエル・トーバーは、なぜかその保護活動に全力をつくしはじめる。木を長持ちさせるためかもしれない剪定で悲嘆にくれたり、事故などで損傷しないよう勝手に周囲に丈夫な柵をたてたり、暴走するジョエル。プラタナスに抱きつく姿は植物を愛するセクシャルマイノリティのよう。
しかしさまざまな専門家を呼んで、プラタナスがその地域では希少になっていることや、哲学的な重要性を証言させたりして、やがて全国から支持を集めるようになる。政治家にもプラタナスの意義を認めさせ、プラタナスを守る運動で出会った女性と結婚して子供まで生まれた。
ところが、そのプラタナスはなぜか切られ、露出していた土は舗装された。とはいえ、先に支持者に枝分けしたプラタナスが全国で植えられており、子孫は反映していくだろう。
21世紀初頭の米国が、ある種の余裕をまだまだ持っていた感じさせる出来事ではあった。ジョエルは白人男性だし、何らかの宗教や社会的な背景もありそうな気はしたが、現代文明のなかで残された小さな自然に注目することで大きな社会に目を向けるドキュメンタリとして悪くなかったと思える。
*1:吹替の演技で誇張しているにしても。