弊社元代表取締役社長 芝山努が、2026年3月6日、肺がんのため永眠いたしました。
享年84歳。芝山は「ど根性ガエル」「元祖天才バカボン」などで作画監督を手がけたのち、映画「ドラえもん」シリーズを20年以上にわたり監督。
テレビ「ドラえもん」ではチーフディレクターを担当し、「忍たま乱太郎」「ちびまる子ちゃん」「まじめにふまじめかいけつゾロリ」など数多くの作品で監督、総監督を務めました。
最後の監督作品は2011年の明石市の広報アニメ『明石と時の思い出』か*1。絵コンテも共同で手がけた30分作品で、ガンバを思わせるキャラクターやドラえもんのタイムマシンのような描写がセルフパロディ的で楽しい。
もともとハイクオリティでハイスピードのアニメーターとして、『アルプスの少女ハイジ』における宮崎駿のようにTVアニメのほとんど全話のレイアウトを担当する力があった。
その力を発揮するように他作品と同時並行したアニメ映画『映画ドラえもん』シリーズの超人的な仕事量は比肩するものがない。子供のころはそれが普通と思って観ていたのでわからなかった。
4作目から監督に抜擢され、原作の連載と並行して長編アニメ映画を毎年つくりつづけ、原作者が病気で連載できない時期や没後もとぎれずに完成させた。21作目までは絵コンテもひとりで切っていた。
他の一般的なアニメ映画を見れば、ひとりの監督であれば数年おきに公開することが通例で、1年1作公開するシリーズでは違う監督がつとめることが基本。
同じようにハイスピードで仕事をする宮崎駿も、監督として1年間に1作品をつくったのは『となりのトトロ』と『魔女の宅急便』くらいで、後者は片渕須直のように前任の監督がいたし絵コンテも分担している。
もちろん作画にまで細かく手を入れる宮崎監督と単純比較はできないものの、レイアウトにつかえるほど細部まで描きこんだ絵コンテで毎年のクオリティをコントロールしてみせるという判断もふくめて、職人をきわめた監督だった。
監督作品はシンプルなデザインが多くて一見すると仕事量は少ない。
しかし『映画ドラえもん』を劇場の大スクリーンで見ると、立体的に構築された空間に大小のオブジェクトが適切に配置されて、映画らしい迫力が感じられた。
多くの作品はスタンダードサイズで制作され、DVDやネット配信でもそれが収録されているが、モニターの設定を変えるなどして、上下をカットしたビスタサイズで視聴して見てほしい。劇場を意識したレイアウトが楽しめるはずだ。
特に初期作品はTV放映や映像ソフト販売を重視していなかったのか、上下をカットしないと不自然に見える部分すらある。
たとえば5作目『映画ドラえもん のび太の魔界大冒険』の冒頭で、巨大ジャイアンがおおいかぶさるように腰をかがめる場面がわかりやすい*2。
スタンダードサイズでは腰が不自然に折れて見えるし、おおいかぶさる動きを止め絵のスライドで処理していることが見えやすい。
それが上下を隠すと、下半身だけ見えている状態からゆっくり顔がおりてくる脅威が見事に表現されている。
顔の全体が見えないからこそ、ジャイアンの巨大さも感じられる。
もちろん記録のためにも映像ソフトにはカットしない全体を収録してほしいところだが、あえて当初の意図にそってカットすることで演出の効果が発揮されることもあるのだ。
現在の多くの人々が見ている状態より、芝山監督のコンテはずっとすごい。
そもそも芝山コンテは背景まで細かく精緻に描きこまれ、完成作品より情報量が多く感じられることもあるくらいで、単独でも読み物として魅力があった。
『ドラえもん』の引退後も『まじめにふまじめ かいけつゾロリ』に提供したストーリーボードなどは、完成作品にはない独立したイラストとしての良さがあった。
*1:作画@wikiのデータを参照した。 芝山努 - 作画@wiki【3/17更新】 - atwiki(アットウィキ)
*2:開始3分34秒。

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