「南米国境警備隊」は、恒例の空港税関。今回はコロンビアやチリの国際空港でさまざまな旅客が制止される。
体内に麻薬入りカプセルを大量に飲みこんだり、荷物の追加料金まではらって大量の果物をもちこんだのに到着後に廃棄を命じられたり、これまで見てきたようなパターンが多い。
ちょっと珍しいのは旅行に行こうとしていた黒人一家。数日前に学校近くで銃撃戦があり、10歳の男子が実弾をひろって宝物のようにもちあるいていた。それが発見されて問題になり、責任者として父親は拘束され、男子は泣け叫ぶ。母親は嘆いて叱責し、これまで他人に迷惑をかけたことがないのにと父親は落ち込み、逆に空港職員がなぐさめる事態に。検察の判断にゆだねられた結果、父親は解放され後日に当局に出頭して手続きをすませるだけで良くなり、予定の便には遅れたが旅行にも行けることになった。実際、そのような実弾が子供の手にはいるところにある社会の問題が大きいな、しかし実弾は暴発の危険もあるので飛行機にもちこむのは危ないな、などと見ていて感じていたので、悪くない落としどころだと思う。
「バチカン市国のスイス衛兵」は、歴史的な経緯から国内で教皇の護衛任務をおこなうようになったスイス衛兵の、新兵に密着。
歴史的には1506年にユリウス二世がスイス人兵士を傭兵として雇ったことに由来するという。イタリア国内にある世界最小国家として、国外はイタリアが守るが、国内はスイスで厳しい条件をクリアした兵士が伝統的なカラフルな服装で儀礼に参加。
しかし教皇が各国を訪問する時の黒スーツのボディガードたちも、スイス衛兵が着替えた姿だという。過去の暗殺未遂事件や、訪問を好んで人々とふれあうフランシスコ教皇についていく大変さ*1など、表向きの顔も見せていく。
もちろん新兵の苦労も描いていて、どれだけ儀礼的に見えても軍隊らしく点呼には遅れることが許されないし、歩哨が重要な任務なので少しの前傾も許されないような直立不動で1時間立ちつづける訓練を受ける。歩哨の任務は4時間におよぶこともあるという。数少ない息抜きの酒も夜にビール一杯だけ。独身でなければ衛兵になれないが、恋人のいる者もいて、なかには二年間も離れている兵士もいる。
「アフガニスタンのラッパー少女」は、アフガニスタンから離れてイランに非正規滞在をつづけ、仕事をしながら歌手になることを夢見るソニータという少女に密着。
少女の名前をタイトルにした2015年のドキュメンタリ映画をダイジェスト。サンダンス映画祭で高く評価されたらしい。
良くも悪くも難民が身を寄せる場所としてのイランが描かれ、そこが米国によって無秩序に攻撃されている現在こそ、放送することに意義があるドキュメンタリだと思えた。
もちろん、このドキュメンタリ内のイランでも、女性は人前でソロパートが歌えないという宗教の規制がソニータにふりかかるし、生活するためには児童保護施設の清掃員として日銭を稼いで生きるしかない。
しかしソニータが故郷から逃げて、夢を見ようとする足がかりになっていることも事実。たしかにレコーディングは規制のため拒否されたり高額の費用を求められたりするが、ついに練習に協力してくれるところが出てきた。アフガニスタンから来た母親が、持参金目当てで60歳との結婚をソニータにせまり、児童保護施設の女性の先生が無力なりに親身に協力しようともする。
ここで持参金の代替金をドキュメンタリ監督が求められ、葛藤して音声スタッフにも批判されながら支払う流れが、ドキュメンタリストという枠組みを超えているからこそ現代ドキュメンタリらしい個性が感じられた。
最終的に監督に協力してもらって、ソニータ自身がアイデアを出して撮影した、強制結婚を告発するMVが世界的にバズり、米国で音楽を学ばないかとまねかれる。そのパスポートを入手するためにもどったアフガニスタンで弟たちはソニータのラップを口ずさんでいた……
ちなみにスタジオで語られた後日談によると、現在のソニータはオックスフォード大学に在籍し、音楽をつづけているという。ICEが暴虐をはたらき、イランと大差ないトランプ政権下の米国にいないことが幸いだと感じてしまった……
*1:マンデラ大統領の護衛の大変さを描いた映画を思い出した。 『インビクタス 負けざる者たち』 - 法華狼の日記
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