法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』つかめドリーム!宝星

 番組序盤で『宇宙小戦争2021』のOPを3分間初公開。しかしミニチュア特撮の制作からはじきだされたのび太が、ミニチュアのようなロケットを見つけて内部から謎の人影が出る場面までしか見せない。見せ場の紹介というより、謎めいた描写で興味をひくことを重視している。


「つかめドリーム!宝星」は、裏山で80憶円にあたる宝が発見されたと報道される。宝物を見つけて楽に暮らしたいのび太は、どんどん残りの宝が少なくなることに絶望し、ドラえもんはなぐさめるため宇宙の宝をさがすロケットを発射する……
 内海照子脚本、山岡実コンテ演出で後期原作を中編アニメ化。2005年リニューアルの初期には1時間SPの半分で映像化していた。
 今回は基本的に原作に忠実で、アニメオリジナル展開はない。宝のある星の細かいディテールを足したり、宝を見つけて運ぼうとする過程をきちんと描いたり、冒険の時間をじっくり描いている。帆船型宇宙船をポケットから出す時や、最初の星に落ちた時の水飛沫の作画が目をひいた。
 宇宙へ行く時に洗濯物が飛ばされるのは2005年版と同じアレンジだが、加速重力でのび太ドラえもんが圧迫される描写も足して、それを3回の宝探しでくりかえすことで天丼ギャグになるところは笑った。しずちゃんが返すようもとめる金額は100円に値上がりしているが、これは原作通り10円でもみみっちさが出て良かったかも。
 最後の原始的な星で石貨を見つけ、地球にもちかえっても役にたたないが現地でつかうことはできるという逆転劇も原作どおり。そこに現地人との会話に描写をさいて、のび太がつかえない石貨をゆずろうとして発見者のものだと断られる描写を足して、のび太と現地人の両方に誠実な印象を出したアレンジが良かった。原始的に見えても文明人らしさがあることで、のび太に依頼されて巨大な別荘をつくってみせる技術力の底力に説得力が生まれている。