法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ボーン・スプレマシー』

記憶とともに過去を封印して、遠い国で恋人とともにおだやかな生活をおくっていたジェイソン・ボーン。しかし突然の襲撃に恋人を失ってしまう。一方、CIAが謎の敵に襲撃を受け、残された指紋から実行犯はジェイソン・ボーンと思われたが……


シリーズ2作目として2004年公開。監督はドキュメンタリ出身のポール・グリーングラスに交代。

グリーングラス監督はドキュメンタリ出身だが、まるでMTV出身監督のように細かすぎるカット割りと手ぶれカメラを多用し、かなり画面が見づらい。デモへの官憲による弾圧をPOVのように再現した初監督劇映画『ブラディ・サンデー』を視聴した時、ひどい画面酔いを起こした記憶がある。

1作目*1もアクションのカット割りは細かいが、日常シーンはややクローズアップが多めなくらいで、ごく一般的な撮影に近かった。『ブラディ・サンデー』も手ぶれカメラ演出が臨場感の演出としてはよくできていたし、実際に惨劇の映像的なリアリティは高かった。今作のように日常シーンでも細かくカットを割り、さらに記憶が断片的によみがえるシーンでさらに細かいカット割りでカメラがゆれると、単純に見づらいし状況がわかりにくい。
娯楽活劇としてそこそこ爽快にまとめた前作を台無しにする発端から、個人の私欲が主人公と組織の両方を犠牲にしていく。結果として組織人と主人公にわずかな信頼が生まれる展開は皮肉だが、シリーズをつづけるための過程という感じがしてしまう。
ただ、記憶喪失というギミックで暗殺者としての罪から逃れて能力と資源だけをもった主人公が、あらためて過去にむきあうため記憶をとりもどし告解する結末は、続編としてやるべき後始末をやったとは思えた。たぶん十年以上前、リアルタイムに近いかたちで視聴していれば、1作目よりこの2作目を好印象に思っただろう。