ラルセンブルグから日本おとずれた少女テレサ・ワーグナーが、あこがれていた日本の城ではしゃいで小さなトラブルを起こす。そこを助けてくれた寡黙な少年の多田光良は、テレサが留学する高校の同学年だった……
2018年に放送された動画工房のオリジナルTVアニメ。スタッフは山﨑みつえ監督をはじめ、『月刊少女野崎くん』からスライドした。
映像ソフト第3巻のスタッフ鼎談によると、2014年に放送された『月刊少女野崎くん』の打ち上げで雑談のようにオリジナルを作ろうという話になり、一ヶ月後に打ち合わせが始まったという。今どきのTVアニメがそんなスケジュール感で作られることあるんだ……
先述の鼎談によると主人公はもともと武士っぽく剣道部にする予定だったが、後からふりかえる小道具として写真がつかわれることになり、部活動も写真となった。つまり『ローマの休日』っぽさが増したのは成り行きもあるらしい。なお、りょーちもコンテ演出のOPで長回ししているカットは、明らかに本編には登場しないイメージとして『ローマの休日』を引用している。
映像面で目を引くのは、背景美術を小物まで細かく描きこんでいること。くわえて瞳の大きいヒロインが、ちょっとした角度の変化にあわせて顔をきちんと立体的に作画しているところも印象的。漫画などの絵柄再現を優先しないおかげか、一見すると少女漫画原作アニメのようなデザインラインでいて、アニメという表現媒体を最大限に活用できる作りになっている感じがある。もちろん、この時期のスタッフがそろった動画工房の力もあってのことだろうが。
物語は先述のように『ローマの休日』のような主人公とヒロインを主軸に、群像劇的な学園ラブコメを展開。ただ架空の欧州国家から日本を賞賛する構図が多くて、ちょっと日本SUGEEが鼻につく描写もいくつかあった。特別予告の食品サンプル賞賛などが典型。そのメインとなる架空時代劇の『れいん坊将軍』はヒロインの浮世離れを表現するギャグとして始まり、ヒロインが日本に興味を強く持つための小道具であり、意外な縁がつながる終盤の伏線でもあるので問題はないが、だからこそ他の文化との相対化も欲しかった。
ただ本編は善良な人々の一方通行の恋模様を描いていき、アニメオリジナル作品だからこそ話を断ち切ることなく1クールできっちり完結している良さはあった。
各話で印象的だったのは第8話で、すでに主人公へ好意をもっているヒロインが、恋に落ちる瞬間をBGMで提示した演出は意外な説得力を感じた。
第9話のコンテも面白くて、冒頭の空港でグルリとカメラがヒロインを回りこむカットで涙を印象づけたり、ラストカットでヒロインの目から上をフレーム外に切って表情を隠したり、主人公への想いを自覚しつつ切りすてようと葛藤するヒロインによりそったカットを重ねて見ごたえがある。
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