「アフリカの大地で生き抜く 「ヌーの子どもの大冒険」」は、タンザニアのセレンゲティ国立公園で群れからはぐれかけたヌーの子供を追う。
100万頭をこえるヌーの群れは、国境をまたぐ巨大な国立公園を大移動する。ハイエナに追われた群れから子供がはぐれ、さらにメスのライオンが近づいたが、なぜかヌーを守るようにふるまい、ハイエナは近づけなくなった。
あくまで気まぐれな母性本能だったのかライオンは一夜がすぎると去り、とりのこされた子供は群れに必死にもどっていく。無事に母親と再会し、成長するなかでワニやチーターといった他の猛獣からも逃げきっていった。
いかにも『あらしのよるに』や『おまえうまそうだな』を思わせる出来事が、偶然の一瞬とはいえ自然にもたしかに存在しうるのだという光景が興味深かった。
「億万長者が極貧体験」は、億万長者が変装して底辺の生活を体験しながら寄付先を決める番組。今回はオーストラリアのIT社長を追う。
今回に潜入するのは貧困地区でクラブハウスが放火されながらも継続しているラグビーチームや、視覚障碍者のファッションモデル、麻薬撲滅をうったえる歌手など。
税の再分配強化どころか基金のたちあげですらない、富裕層の気まぐれの寄付を一度やるだけの企画に意義は感じづらい。しかし今回は直接に生活困難者に寄付するというより、さまざまな生活困難を継続して支援している活動家を紹介するかたちになっていて、啓発番組としての意義があったと思う。
「ウシ泥棒がマラソンランナーになるまで」は、ケニアで牛泥棒で生計をたてていた男たちが、犯罪者が銃を手放すかわりに賞金が出るというレースをきっかけに変わる姿を追う。
牛泥棒はそれなりに脚力がいるので、ドキュメンタリが密着したふたりのうちひとりアリレは優勝。見事に強化合宿に参加できるようになった*1。銃規制をうったえる国連での講演にも参加した。
しかしせまい地域では圧勝できたアリレも強い選手をあつめた場所ではなかなかついていけない。外国のマラソンに出場しても賞金の出ない7位だったりして、アリレの収入を期待する親族から不満がぶつけられる。
それでも少しずつ順位をのばしていったアリレは、おおきな大会でも入賞して高額の賞金を獲得。牛泥棒だった過去をもちながら、堂々と牧場と牛を購入することができた。
一方、アリレと同時にレースに出場した友人はプロランナーになることはできず、優遇されることを期待して選挙応援した相手も当選できなかったが、アリレに夢をたくすかたちで真っ当な生活をつづけているらしい。
あくまで最上位のトップランカーだけが可能な生活で、根本的な社会問題の解決ではないかもしれないが、脱出できる道筋を実際に見せるだけでも意義があるのかな、ということを思った。
*1:ケニアでマラソン選手のサポートをおこなっている池上秀志氏の文章によると、強化合宿がおこなわれるイテンは歴史的な経緯で快速選手が多いという。 www.ikegamihideyuki.com