法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『トロピカル~ジュ!プリキュア』第20話 名探偵みのりん! 消えたメロンパン事件!

購買でたったひとつのトロピカルメロンパンを買う権利を抽選し、夏海が当選する。喜び部室にもちこんだ夏海だが、呼びだされて戻るとトロピカルメロンパンは消えていた。ちょうど探偵小説にはまっている一之瀬が名探偵を自認して推理をはじめるが……


特にイベント回でもないが、初めてローラをふくめての5人同時変身で、バンク作画のラストが新規映像に。おそらく原画は藤原未来夫。


物語はいかにもなミステリパロディで、もちろん自己申告でしかない一之瀬自身も犯人である可能性が疑われる。『Yes!プリキュア5GoGo!』の佳作回を思い出すストーリーだと思っていたら、脚本が当時シリーズ構成だった成田良美*1。意外とミステリ志向が強かったりするのだろうか。
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同じ学園内の人間関係で進行するからこそ、前回につづいて語り口の変化でバラエティを生む趣向が楽しい。ビジュアル面でも推理したイメージ風景をアイキャッチと同じデザイン調で処理して、少ない枚数で効果をあげている。
戦闘のさなかに自分の意図せぬ犯行に気づいて、自白から和解する流れのイレギュラーぶりも楽しい。そこで戦闘より友情を優先したプリキュアに対して、おやつが大事だと反撃する敵幹部がコックなのも気がきいている。
ただ、出入り口を階段ひとつに設定したことで、容疑者がトロピカる部のメンバーに限定されつつ誰もが犯行が可能となり*2、不可能犯罪的な興味は弱かった。出入りの時系列も確認しながら微妙な空白が多すぎて、手がかりから断定していく面白味は弱い。プリキュア同士が疑心暗鬼になって混迷が終わらないシチュエーションを重視したのかもしれないが、ここは好みがあわなかった。


そして真相は、メロンパンを星形の珍しい形状にすることで想像はできていたが、やはりメロンパンとは思わずに食べてしまったというもの。この動機面と、戦闘中に事実に気づく流れは整合性がたもてていた。メロンパンにかかわったキャラクターを分割することで謎が強まったことも最後に明かされる。
ただ、せっかく動機面の意外性を演出するなら、キャラクター全員のモノローグを入れて、メロンパンなんて食べていないという主観的真実を視聴者に明示すると、より完成度が増したと思う。ついでに、ローラだけトロピカルメロンパンを見たことがないと会話からわかるように描写できれば、犯人を特定する手がかりにもなったろう。食べていないとローラが強く自己申告する描写はあるが、あくまで周囲に追及された局面なので、その発言が主観的真実とは確定できていない。

*1:該当回の脚本は清水東

*2:階段の出入りを確認して、容疑の輪をせばめつつ自らを入れた鈴村だけは一般的には可能性が低いと考えるべきだろうが。