法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ハワイがやってくる/母の日は終わらない

「ハワイがやってくる」は、ハワイ旅行中のスネ夫から自慢する小包みがとどき、のび太は悔しくてたまらなくなる。そこでしずちゃんの家に行くと、出木杉ジャイアンが旅行帰りの土産を自慢して……
出木杉が珍しく激怒したエピソードを、2005年リニューアル以降に初アニメ化。旅行終了の時期にあわせたゴールデンウィークの季節ネタか。
原作では、月が少しずつ近づいているという理科知識をのび太が唐突に発揮してオチになったが、今回のアニメでは序盤のしずちゃん家で出木杉が月が少しずつ遠ざかっていることに言及。のび太がその知識をもっている背景にしつつ、原作の考証ミスをフォローした。そこでオチはどうするのかと思ったら、秘密道具が時間をもどす機能がある描写をつかって、原作どおり月が接近するオチに。ここはなるほどと思った。
ただ原作を読んだ時から気になっていたが、折れた鍾乳石をのばしても追ってしまった歴史は変わるまい。せめて、タイムふろしきのような時間をもどす秘密道具を今日は持っていないと説明する描写はほしかった。


「母の日は終わらない」は、母の日でみんないそがしく、のび太は遊ぶことができなかった。しかし玄関でこぼした水をふいていたら、掃除をしていると母がかんちがし、別の過ちも怒られず……
伊藤公志脚本によるアニメオリジナルストーリー。秘密道具「もしもボックス」をつかって、特別な季節イベントが永続するように世界を改変する。
本物のカーネーションが消費されつづけて品不足になり、オークションするほど値がつりあがっていく。母に絵を描いてプレゼントしていた少年は、どうしても新味を出すために抽象画へはしっていく。
そうして特別なイベントとして成立しづらくなる一方、習慣づけられた母のてつだいは不満がなくなっていく。叱責を見逃してもらう口実で母の日をつづけていたのび太は、母の日を終わらせた後もてつだいをつづける。母の苦労は毎日つづくことを実感したから。
ただの思いつきのようで、ジェンダーバイアスについて思考実験したジェンダーSFとも解釈できる物語で、期待したより見ごたえある内容だった。