つくりものの感動二本立て。方向性が異なるが、それゆえ前半と後半の落差がすごい。
「精霊よびだしうでわ」は、ストーブが故障したので、秘密道具で火の精を出す。しかし火の精は暴走してしまい、しかたなくのび太は外出したのだが……
2008年2月に「のび太に恋した精霊」というサブタイトルで映像化した原作のリメイク。今回は「雪のせい」を茅野愛衣が演じる。コンテを担当した加藤敏幸は、おそらく作品初参加。
異類からの恋慕と犠牲を描いた情感あふれる物語を順当にもりあげている。ただ、挿入歌で感動を増そうとする演出は、好みから外れていたかな。この番組ではあまり使わない演出なので、ギャップの良さも感じたが。
あと、電気ストーブが故障したので家が冷えてしまうという描写は、それくらいなら現在なら修理が終わるまで代替品をもらえたり、そもそも修理費より買い替えするのが安いのでは?という疑問もおぼえた。修理に時間がかかることや、家全体の暖房に問題があるシチュエーションと考えると、今回だけでもエアコンの故障に設定したほうが良いのでは。
「もはん手紙ペン」は、のび太が母に指示されて手紙を書こうとするが、稚拙すぎてドラえもんが秘密道具で助ける。のび太はその秘密道具でしずちゃんの心もつかむが……
たしか2005年リニューアル以降で初の映像化。基本的には文通が多かった時代の作品であるが、後述のように現代に通じる普遍的な内容。
書くことと話すことが違って、そのギャップで期待したり幻滅したり。対面しない文章のやりとりが多くなったSNS時代、より身近な現実になったストーリーだ。
特にインターネットで書く文章は、さまざまな変換ソフトの予測変換などで入力支援してもらえるし、知識の深さや正確性なども資料にあたって簡単だ。
この種のストーリーはどうしても作中で絶賛される表現を説得的に描くことが難しいが、出木杉の小話はモチーフと関係するポストの赤色についての豆知識で、けっこう楽しかった。