法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 Season19』第13話 死神はまだか

落語の椿屋一門で、女性の新弟子が師匠の世話をすることになり、それまで世話をしていた弟子が破門された。
少し後の公演で、高座にあがっていた師匠が急死する。衆人環視の状態で殺人とは思えないが、観客だった杉下は不審をいだく……


輿水泰弘脚本。いまだタレントこぶ平の印象が強い九代目林家正蔵が総領弟子を演じ、15期第12話*1の別役の印象が残る笹野高史が師匠を演じる。
近年はシーズンの初回と最終回のSPを担当して内容の薄さが残念なことが多く、ひさびさの通常1時間枠に登板した今期第10話*2も感心できなかったが、今回は悪くなかった。
杉下の落語好きを活用し、冒頭で杉下が落語の「死神」の悪夢を観ているコメディから、「死神」を演じる最中の死、落語の幕引きのような結末まで、すっきりコンセプトがとおっている。
ミステリとしては、一ヶ月放置されていた饅頭の謎に、一種の密室的な不可能状況での死が見どころ。前者はその時に何か特別な用事があったと考えて証拠をさがす契機になり、後者は古典的なトリックひとつで成立させた。


実をいえば、冒頭の「死神」で倒れる演技でそのまま死んだ状況から、殺害の方法に意外性はない。死神の新趣向があるというメモが見つかった時点で真相は丸わかりで、もう少しひねりを入れてほしかったかな。
また、実行手段が毒殺なら、カプセルに毒を入れて遅効させても同じ結果にできそうだ。衆人環視のなかで突然死させて殺人と感じさせず司法解剖させないことが目的だろうから、厳密なタイミングで殺す必要があったとは説明できるが……たとえば師匠は高座にのぼる前は飲み食いしないから毒死の可能性はない、と否定する手続きは入れられたと思う。