法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』水道ジュース変換アダプター/ぼくミニドラえもん

今回はエンディング後に映画に登場する恐竜を細かく解説。3DCGで生々しく動かしているところが独特のリアルさを感じたが、しかし連続で見せられると毛が生えた種類が意外と少ない。


「水道ジュース変換アダプター」は、せっかくのケーキに水しかなく、のび太はジュースを飲みたいとねだる。そこでドラえもんが秘密道具を蛇口につけて水をジュースにすると……
伊藤公志脚本のアニメオリジナルストーリー。作画監督の渡辺あゆみはSynergySPのアニメーターだと思うが、コンテで杉島邦久が初参加したことには驚いた。
杉島監督といえばサンライズ作品の印象が強く、サンライズオリジンスタジオが最近よく下請けする関係かと思ったが、そういえば近年は『メタルファイト ベイブレード』シリーズ監督でSynergySP制作作品との関係も深いか。
ともかく序盤は子供の単純な欲望をかなえるアニメオリジナル秘密道具を出しただけで、あまり展開の巧妙さを感じなかった。タライいっぱいのジュースを出して丼で飲む欲望充足ぶりがそれらしかったくらい。
台所の蛇口がつかえなくなったので、超空間をとおる見えないパイプをつないで部屋まで水をひくが、ここでホースをつかわない意味がわからなかった。のび太が商売を考えて、ひとり300円で子供たちの部屋にジュースパイプをつなぐ展開も、後期原作らしさこそあるものの、まだ水道局のコスプレを楽しんでいるだけに見えた。
しかしトラブルが発生しはじめてから印象が変わっていく。後払いにするよう押しとおすジャイアンは、水道料金を例にあげる。ジュースパイプは子供のライフラインだと主張する者も出てくる。利用者が増えすぎて水圧が足りないのでポンプアダプターで加圧する。今度は謎の音が発生して、圧力を高めすぎてウォーターハンマーが発生したとドラえもんが説明する。子供たちは飲み放題と思って、水飲み場が壊れてあふれても気にせず利用しつづける……ここまで来ると前半の手作業でパイプをひく光景も、サービスをはじめる大変さを実感させる描写として意味が出てくる。
とうとう水道局のコスプレのまま、のび太ドラえもんはサービスを終了する謝罪会見をひらく。その帰り道、現実の水道工事をしている職人を見て、その大変さに思いをはせる……もちろんオチは水道料金で母親に叱責された。
シンプルな欲望ひとつから拡張して行政サービスが再現されたことに、SFらしい面白味があった。子供たちが右往左往するドラマも、コメディチックな群像劇として楽しい。うがちすぎかもしれないが、ひとり高い料金を出したスネ夫が好きなジュースを要求する場面もふくめて、水道料金民営化を批判的に風刺したとも読める。
全体を見返せば、水道サービスの開始と破綻を学習漫画のように再現しただけともいえる。しかし予想外につくりこんでいて感心させられた。


「ぼくミニドラえもん」は2017年の再リニューアル初回SPの再放送。長編SPに付属した短編だったので短い印象があったが、改めて見ると普通の尺だ。
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