法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

映画の邦題や宣伝のダサさについて、マニア層よりライト層に売りたいという主張はわかるが、両方に受けた事例があることを否認するのはダメでは

邦題や宣伝の方向性について、匿名のプロデューサーからコメントをとった記事があった。
「ダサい邦題」「タレントでPR」、熱心な映画ファンが“無視”される事情 稲田豊史の「コンテンツビジネス疑問氷解」|ビジネス+IT
ざっくりいえば、マニアは少数だし何をしても最終的に見にくるから、ライトな一般層にリーチするためわかりやすさを優先するというもの。
単純にマニア層よりライト層の数が多いだけでなく、マニア層の評価による宣伝も期待できないと、このプロデューサーは主張している。


不思議なことに、検索エンジン最適化についての言及がない。そのあたりを全く意識していないかのような邦題が韓国映画につけられがちな謎は解けなかった。
『弁護人』 - 法華狼の日記
『アシュラ』 - 法華狼の日記
上記の他にも、原題から直訳された映画『お嬢さん』は一般名詞でもあり、同名の日本映画もあることだし、原作の邦題と同じ『荊の城』というタイトルにするべきだと感じたものだ。
仮説としては、韓流ブーム初期にシンプルな邦題の映画『シュリ』がヒットした前例があり、かつ現在の韓国映画はミニシアター系が多いため、わかりやすさを犠牲にできると考えられるが……


さて、プロデューサーの主張をつたえた記事へのコメントは否定が多いが、理解を示すコメントもいくつかある。
その個別の当否はさておいて、下記のコメント*1だけは事実認識に首をかしげざるをえなかった。
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id:machinematine 映画ファン好みのシンプルでオシャレなデザインのポスターだったけど、「ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険」はそこまでヒットしなかった。結局、この手の話に文句言ってるのはノイジーマイノリティなのよ。

ポスターが評判になっただけでなく、デザイン化されたキービジュアルも印象深かった作品だ。
「映画ドラえもん」新ポスターが超カッコよくて大人もぐっとくる 起用の理由は?
私も第一報のティザーサイトの時点で、その珍しさに強い印象を受けた。
2017年の『映画ドラえもん』の公式サイトが公開&『クレヨンしんちゃん』のオリジナルエピソードがAmazonプライムで独選配信 - 法華狼の日記

情景としては、巨大な氷山を豆粒のような登場人物が見あげるティザービジュアルが確認できるのみ。

ここまで力強く、キャラクターに頼っていないティーザーは珍しいですね。
スクロールさせて全貌がようやくわかるという点で、WEB向けデザインとしてもよくできている。

俳優でもないタレントをゲスト声優に使っていたが、それはシリーズの恒例であり、この作品だけの宣伝ではない。むしろ本編では動物的なキャラクターで鳴き声を出させるにとどめて、比較的に違和感を抑えていた。
宣伝の一環としてスケーターがダンスするイメージソングを作ったが、それは本編には用いられなかった。


そして「そこまでヒットしなかった」というが、実際は2006年のリニューアル以降で、最高興収を更新した。
その記録は次年度の作品『のび太の宝島』がさらに興収記録を更新したニュースにおいて言及されている。
『映画ドラえもん のび太の宝島』興行収入44.4億円突破 | アニメイトタイムズ

★『映画ドラえもん』新シリーズ(※)で、昨年に続き興行収入歴代1位を更新!
★2016年公開『新・のび太の日本誕生』以来、3作連続の40億超え
★これまでの新シリーズ最高興行収入記録
映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険(2017年3月4日公開)
44.3億円

念のため、もっとライトな一般層に向けた宣伝をすればさらに興収がのびたという仮説がなりたたなくもない。
しかし事実として、マニアもライトも両立する作品はありうるし、あったことは認めるべきだろう。

*1:はてなスターをつけたアカウントも列挙すると、id:iwwid:whkrid:sbedit1234id:asakura-t