法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ドラかぐや、月に帰る!?/おおかみ男クリーム

アニメオリジナルの前半と、くりかえしアニメ化された後半の、どちらもが映画にあわせて月モチーフ。さらに今回はやけに映画宣伝の実写コーナーも長い印象があった。


「ドラかぐや、月に帰る!?」は、読書感想文のため絵本にドラえもんのび太が入りこむ。しかし縮小して隠れていたため、ドラえもんかぐや姫と間違われて物語をなぞることに……
鈴木洋介脚本によるアニメオリジナルストーリー。ドラえもんは物語を破綻させないため秘密道具を駆使するので、本来の展開から大きく逸脱することが最後までない。婚姻を断る本来の展開のおかげで、正体がばれそうになる局面そのものが少ない。本当のかぐや姫が乱入する展開くらいはあるかと思っていたが。
全体として、キャラクターを置きかえ、のび太への説明をとおして視聴者に物語を解説するだけの、良くも悪くも教育アニメのようだった。ならばもっと徹底して、平安時代は丸顔が美人の条件だったとか、姿形より文化的な技能で美人判定されていたといった歴史解説をわかりやすく語ってほしかったな。
あと、ドラえもんの地声がバレた場面で、まるで男の声のようだと論評される描写があって、いや声優は女性でしょとツッコミを入れたくなった。


「おおかみ男クリーム」は、狼男になってしまう秘密道具をママが間違えて使ってしまう。そこでママに気づかれないよう、変身もさせないよう、ドラえもんが孤軍奮闘するはめに……
2005年リニューアル以降に2度もアニメ化された短編を、寺本幸代コンテで再々リメイク。ママとドラえもんの珍道中という原作の珍しい人間関係に、ドラえもんの顔も丸いことに着目した2005年以降のアニメオリジナルギャグ*1を、踏まえながら発展。顔の輪郭だけでなく鼻も手も球形に見えないような恰好をして、悪戦苦闘するドラえもんが笑える。
禿頭キャラクターとして原作のゲストキャラクターに盆栽談義をさせたり、他のアニメオリジナルトラブルも原作をふまえていて楽しい。物語の構造そのものは原作から何も変わらないが、その魅力を最大に引き出すアイデアを最初に考えた2005年版スタッフのすごさをあらためて感じる放送だった。