法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』大あばれ、手作り巨大ロボ/しずかの焼きイモ交響楽

「大あばれ、手作り巨大ロボ」は、スネ夫の従兄がつくった人間大の二足歩行ロボットの標的にのび太が選ばれた。ひどい目にあったのび太のため、ドラえもんは組み立て式の巨大ロボットを出してやるが……
 大長編『のび太と鉄人兵団』の原型になったような中期短編を、通常より少し尺をのばしてアニメ化。2008年も、後に『鉄人兵団』のリメイク映画*1を監督する寺本幸代がコンテ演出を担当して、30分枠いっぱいつかってアニメ化していた。
『ドラえもん』大あばれ、手作り巨大ロボ - 法華狼の日記
 今回は内海照子脚本、善聡一郎コンテという布陣。2008年とくらべて展開や描写は基本的に原作にそっている。暴走を止めるためエネルギー消費をかねてのトンネル掘りを、最後の最後にエネルギー切れ寸前で困ることでロボットの稼働をふたたび望むアレンジはあったが、これは2008年版の踏襲と思った。
 今回はストーリーのアレンジが少ない分、ビジュアルには力が入っている。ロングショットを多用してロボの存在しうる世界の広がりを感じさせたり、巨大なタイタニックロボの暴走を止めようとしがみつくのび太でロボの巨大感を表現したり。
 初出が1980年の原作では、ロボットが初期の大河原邦男デザインのようにブロックをつみあげたような、とても歩行など難しそうな形状だったところ、今回のアニメではデザインを踏襲しつつ動きそうな間接にアレンジされているところも注目。グランロボの膝は二重関節になり、タイタニックロボの各関節は露出型のボールジョイントになった。まるでガンプラのアレンジのようだ。その間接構造を活用するように、ちゃんとロボの動きを手描きで作画できていることも感心した。
 さらに原画に田中宏紀がサプライズ登板。さまざまな作品に顔を出しながら、著名アニメーターが参加してきた『映画ドラえもん』には一度もクレジットされたことがなかったが、まさかTVでスポット参加するとは。煙エフェクト作画の見事さなどから考えると、おそらくタイタニックロボの最後の一撃だろう。物語に要請された爽快感を、映像で見事に支えていた。


「しずかの焼きイモ交響楽」は、花見には音楽がいると思ってバイオリンをひこうとしたしずちゃんだが、練習で壊してしまったという。安心するドラえもんだが、のび太しずちゃんのためバイオリンを出してもらうとする……
 映画宣伝をかねたようなアニメオリジナル秘密道具をつかったアニメオリジナルストーリー。水野宗徳シリーズ構成が脚本、小倉宏文監督がコンテで、映画に参加している葉加瀬太郎が声優として登板。
 前半に尺をつかった分だけこちらは短く、基本的に秘密道具でその場にあるものを楽器化する楽しさと、葉加瀬太郎ならぬひかせ太郎としずちゃんの共演を見せるだけのシンプルな内容。
 しかしのび太ティンパニーを最初に叩く時、周囲の物品をセル画*2で作画したことで、何を叩かせるか予想させなかったことがうまい。物品ではなくドラえもんの頭を叩いたひどさに爆笑した。
 葉加瀬太郎のアフレコはイマイチだったが、終了後に流れたアフレコ風景が、一般的なブースではなく、椅子に座ってせまい場所でおこなわれているところは興味深かった。ひょっとして新型コロナ禍を受けてのアフレコ方法の変更なのだろうか。