法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

強姦冤罪事件の責任を偽証した女性が負うべきではないのはもちろん、原因と考えるのも無理があるのでは

そう思わざるをえない法律事務所のまとめを読んだ。
【刑事】強姦被害者とされる者の虚偽の供述があったために有罪とされた冤罪事件に関するメモ - 竟成法律事務所(旧 法律事務所ミライト・パートナーズ)のブログ
まず、最初の報道の時点でも、偽証とは別個に、カルテという証拠が見逃されていた問題があった。
強姦冤罪事件、女性の「うそ」で服役 裁いた国の責任は:朝日新聞デジタル

男性が服役中の14年、女性が「被害はうそ」と告白。親族も証言が虚偽と認めた。その後の大阪地検の調べで、女性が被害届を出した後に受診した医療機関に「性的被害の痕跡はない」とするカルテがあったことが判明。

また、朝日記事の無料範囲では明示されていないが、女性は男性の孫であり、母親に求められて偽証したという報道もあった。
【強姦事件再審】男性に無罪判決、6年拘束「計り知れない苦痛与えた」大阪地裁裁判長が遺憾の意(1/2ページ) - 産経WEST

女性は再審公判に先立つ再審請求審で、母親から何度も「やられたやろう」と問い詰められ、虚偽の強姦被害を告白したと説明。母親と疎遠になったことを契機に、真実を打ち明けようと決意したと述べた。

母親が疑った原因として、この母親は父親である男性から性的虐待*1を受けていたというあやふやな情報もあった。


そして法律事務所のまとめを読んだところ、母親への性的虐待は男性側も認めて裁判で争わなかった*2ことが明らかにされていた。

弁護人は,被害少女の母親であるCが,中学生から高校1年生のころまで同意の上で被告人と性的関係を持っていたのに,その後,被告人がBを選びCを選ばなかったことから,これを恨みに思い,被害少女や兄Aを使って今回の各被害をでっち上げた可能性がある旨主張する。

また、母親らが強姦されたと疑って女性を問いつめた原因として、女性が性的暴力*3をうったえた発端が再審でも認められている。

被告人からお尻を触られる旨大伯母であるE(以下「E」という。)に話したところ,それを伝え聞いた実母であるF(なお現在の姓はCである。以下「F」という。)及びその夫であるG(以下「G」という。)から他にも何かされたのではないかと何日間も深夜に及んで問い詰められたため,最後には,胸を揉まれたと認めた,その後,強姦されたのではないかとの問いに対しても,これを否定することができなかった,

これでは母親が女性を問いつめるのは無理からぬことであり、事実がどうであれ保護を優先すべき状況という印象は受ける。
あくまで問題は、実際の罪にふさわしくない過大な罰がくだされたことだ。責任は、証拠の無視によって誤った認定をみちびいた公権力にあろう。


この事件の概要を読んで、外国人差別を題材にした刑事ドラマの結末を思い出した。
『相棒 season17』第9話 刑事一人 - 法華狼の日記

どれほど憎悪すべき下劣な人間だったとしても、冤罪によって犯していない罪の罰がくだされていいわけではない。どれほど憎く感じる相手にも人権があると理解してこそ、外国人を憎悪し排斥しようとする思想へあらがうことができるのだ。

冤罪は、必ずしも清廉潔白な人間に罰がくだされる問題ではない。それでも、だからこそ冤罪を起こしてはならないのだ。

*1:保護者による児童への性的行為を指す言葉であり、児童の同意の有無などはここでは無関係。

*2:厳密には、あくまで裁判の場で争わなかったということであって、独立して事実認定されているわけではないようだが。

*3:辞書的に、DVや避妊の求めに応じないこと等、広範な意味をもつ。